わたしたちはいま、スマホの普及に伴う情報過多とコロナ禍によって多くのストレスを日常的に抱え、「疲れがなかなかとれない」「むしょうにイライラする」といった「脳の疲れ」が原因の症状が出やすくなっている。
そこで読んでおきたいのが、イェール大で学び、精神医療の最前線である米国で長年診療してきた精神科医・久賀谷亮氏が、「脳の疲れ」を解消できる「科学的に正しい」脳の休め方を伝授している『脳疲労が消える 最高の休息法[CDブック]』だ。
本書は、シリーズ累計28万部を突破しているベストセラー『世界のエリートがやっている 最高の休息法』の内容をコンパクトに凝縮し、さらに久賀谷氏監修の「特別音源CD」を付属した実践編だ。
今回は『脳疲労が消える 最高の休息法[CDブック]』より一部を抜粋・編集し、ストレスによる身体の不調を解消する画期的な休息法をご紹介する。(構成/根本隼)
ストレスによる身体の異変を癒やすには?
脳の疲れと聞いて、誰もがまず思い浮かべるのがストレスでしょう。他人(あるいは自分)にイライラしたり、先のことを不安に思ったり、大きな緊張を抱えたりすることで、脳には一定のストレス反応が起こります。
パニックまでいかないにしても、ストレス反応はさまざまなかたちで身体に影響を及ぼします。肩こり、頭痛、腹痛、下痢など、ストレスで身体に不調が起きている人にオススメなのが、ブリージングスペースです。
まずはイスなどに座って背筋を軽く伸ばし、お腹はゆったりとした姿勢にしましょう。手は太ももの上に置き、脚は組まないようにし、目は閉じてください。目を開ける場合は、2メートルくらい先をぼんやり見る感じにしてください。しばらく身体の感覚や呼吸に注意を向けたら準備完了。ここから全部で3つのステップがあります。
ブリージングスペースの3ステップ
まず、ストレスに輪郭を与えるのが第1のステップです。何かイヤなことが起きたとき、嫌いな人のことを考えたときに、自分の身体にどういう変化が起きるかに注意しましょう。
ストレスの原因を1つのセンテンス(文)にすることもオススメです。その文を心のなかでつぶやいたとき、胸のあたりがギュッとなる、脈拍が速くなる、顔がほてる、胃にキリキリした痛みを感じるなどはありませんか?
些細なことでいいので、ストレスというつかみどころのないものを、身体の変化という具体的なものに置き換えましょう。
次に、ベーシックなマインドフルネス呼吸法(注)を行います。呼吸の回数を数えながら、身体のこわばりに向かっている注意を呼吸に引き戻します。過去のイヤな記憶や将来の不安に占められていた意識が呼吸に集まってくるにつれて、身体の緊張がじわじわと緩んでいくのを味わってください。
身体全体に注意を広げる
最後がブリージングスペースの大事なところです。呼吸だけに向かっている注意を、身体全体に広げてみましょう。身体全体が呼吸しているようにイメージし、そこに注意を向けるようにするとうまくいきます。
息を吸うときに、第1のステップで違和感があった部分に空気を送り込むようにイメージするのもオススメです。そこから空気が通るたびに、こわばりがとれて柔らかくなっていく感じ、開けていく感じを堪能しましょう。
肉体の疲労も脳へのアプローチで癒やせる?
脳疲労の原因となる心のストレス反応を癒やす方法についてお話しましたが、それ以前に、やはり身体が疲れているという方もいらっしゃるでしょう。
身体の疲労についての科学的な研究データはまだ十分ではありませんが、近年では、肉体の疲労も疲労感という「脳の現象」としてアプローチされるようになりつつあります。
疲労感の解消に欠かせないのはやはり運動です。運動によって人間の脳が変わることもよく知られています。
たとえば、平均60代後半の人たちが、40分ほどの有酸素運動(速歩)を1年続けたところ、記憶を司る海馬の容積が2%増加しました。運動によって脳年齢が1~2歳は若返ったわけですから驚きです。
マインドフルネスが疲労感を軽減する
また、慢性疲労症候群(強い疲労感が長期間にわたって消えない病気)の患者さんを対象にしたメタ解析では、運動指導と同じくらいの有効性がカウンセリングにも認められています。
重い疲労感を伴うことで知られる繊維筋痛症や多発性硬化症といった疾患でも、マインドフルネスが疲労感を軽減するという報告があります。
これらを踏まえれば、身体の疲れすらも、休息のメインステージはやはり脳なのだと言えそうです。
(本稿は、『脳疲労が消える 最高の休息法[CDブック]』から一部を抜粋・編集したものです)