ロシア経済の岐路、「新冷戦」なら敗北の道Photo:NurPhoto/gettyimages

――筆者のグレッグ・イップはWSJ経済担当チーフコメンテーター

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 ロシアによる2014年のクリミア併合は、グローバル化の流れを変える転換点だった。1989年のベルリンの壁崩壊で始まった東西両陣営の経済の融合が、この時から崩れ始めた。

 ロシアがウクライナに侵攻し、西側諸国が厳しい対ロ制裁に踏み切れば、この崩壊のプロセスは劇的に加速するだろう。そうなれば世界は事実上、ロシアと中国による経済圏と、市場原理を基盤とする西側民主主義諸国の経済圏の二つに分断される。この新たな経済冷戦の勝者を予想するには時期尚早だ。しかし、ロシアが敗者になると予想するのは、時期尚早ではない。

 冷戦の終結は、二つの面でロシア経済を変質させた。まず、市場経済が中央計画経済に取って代わった。そして西側諸国から貿易、投資、ノウハウが一気に流れ込んだ。そのメリットが実現するのに長い時間がかかったことは確かだ。移行期間中には、さまざまな問題が起きた。初期には不況に見舞われた。民営化は、ロシア経済の花形分野をオリガルヒ(政治権力と結び付いた新興財閥)に譲り渡した。そして1998年には、通貨ルーブルの切下げ、対外債務の返済停止という破滅的状況が起きた。