米マイクロソフトの新しいオペレーティングシステム(OS)、ウィンドウズ7(セブン)の販売が始まった。異例の早さでセブンを市場投入した背景には、これまで1社独占だったOS市場の環境変化がある。米アップルの追撃、最大のライバルである米グーグルのOS参入によって、マイクロソフトはかつてない戦略大転換を迫られている。マイクロソフトは新OS戦争でも勝者となれるのだろうか。(「週刊ダイヤモンド」編集部 前田 剛)
マイクロソフトの危機感!
過去の流儀を自ら捨てた
「ウィンドウズ7」開発秘話
「セブン!セブン!セブン!」
10月22日、ザ・プリンス パークタワー東京。ウィンドウズ7発売記念イベント会場に威勢のいい鏡割りの掛け声が響き渡る。
ステージ中央には、青い法被(はっぴ)を羽織った米マイクロソフト、スティーブン・シノフスキー・ウィンドウズ担当プレジデントの姿があった。セブン開発総責任者としての重責を果たした彼の表情には、安堵感と充実感がにじみ出ていた。
時計の針を巻き戻した2007年3月、ワシントン州ベルビュー。マイクロソフト本社のあるシアトルからほど近いこの街に、ビル・ゲイツ会長やスティーブ・バルマーCEO(最高経営責任者)らマイクロソフト首脳をはじめ、約3000人の開発者が集結した。次期OS・セブンのキックオフイベントである。
この年の1月、マイクロソフトが鳴り物入りで発売したウィンドウズビスタは「動作が遅い」「XP(ビスタの前のOS)で使えたソフトが使えない」などユーザーの評判はさんざんで、販売も伸び悩んでいた。マイクロソフトは、かつて経験したことのない大きな壁にぶつかっていた。