7月下旬、国内ケーブルテレビ首位のジュピターテレコム(J:COM)は、スマートフォンやタブレット端末向けの専用アプリケーション「J:COMアプリ」を発表した。

「J:COMアプリ」で、コンテンツに接する機会を増やすという取り組みは、長らく伸び悩みの状態にある“日本の多チャンネル市場”に再び世間の目を向けてもらうと同時に、加入者の解約を防ぐという役割が期待されている。だが、潜在的なポテンシャルは、その限りではない

 7月26日より米アップルのiPhoneとiPad向けを、30日からはAndroid端末向けを、それぞれ提供を開始した。アプリをダウンロードすれば、J:COMの加入者でなくても、①民放やBSも含めた総合テレビ番組表、②ジェイコムマガジンの閲覧(PNG)、③劇場公開映画の予告編やビデオオンデマンド(VOD)のコンテンツなどが、無料で視聴可能になる。

 開発を担当したJ:COM新サービス開発部の芳賀秀隆マネージャーは、こう力を込める。「将来的には、ケーブルテレビのJ:COMのサービスエリア内で提供している有料のVODサービスをスマートフォンやタブレット端末などでも見られるようにしたい。その後は、外出先から、各種の端末をリコモンのように使って、番組を検索したり、録画できたりする機能を付加することも検討中だ」。

 J:COMアプリは、現時点では新規加入者の獲得よりも、既存の加入者へのサービスの拡充に軸足が置かれる。というのも、スタート直後こそJ:COMのサービスエリアに住む加入者以外もインターネットを通じて各種コンテンツを見られるが、2012年以降は認証(課金)が必要になり、加入者のみのサービスとなるからである。

 この点について、J:COMは「既存のお客様の満足度向上につなげる」と説明するが、その背景にはそうせざるをえないケーブルテレビ業界特有の事情もある。そしてそれは、現在のケーブルテレビ業界では最大手でありながら、ネット系のサービスでいまひとつ飛躍できないJ:COMが置かれている難しい現状を浮き彫りにしている。今後、固定通信と無線通信(モバイル)の本格的な連携が始まったとき、そこに進出しようにも高い壁が存在するということを露呈させているのだ。