「コミュニケーションは“お笑い”のスキルでもっとうまくいきます」。そう語るのは、元芸人でネタ作家の芝山大補氏だ。芸人300組以上のネタ制作に携わった経験を活かし、ビジネスパーソンから一般の方まで幅広い層に「コミュニケーションに活きる笑いのスキル」を教えている。そのノウハウをまとめた初の著書『おもろい話し方 ~芸人だけが知っているウケる会話の法則』が6月1日に刊行された。「初対面でも会話が続く人がやっていること」「相手の心に10倍響く”感想”の伝え方」「好かれるリアクションの極意」「すべらない話の作り方」「お笑いタイプ診断」など、元芸人ならではのコミュニケーションノウハウが満載の一冊だ。本書の発売を記念し、その一部を特別に公開する。

元芸人の僕が芸能界で学んだ「トークがうまい人」が絶対にやらないことPhoto: Adobe Stock

「出だしゆっくり、声低め」がトークの基本

 芸人時代、業界内では敏腕で知られるマネージャーさんが教えてくれた、忘れられないアドバイスがあります。

 話し始めはテンポを下げて、トーンは低めにしなさい。

 そんな教えです。「最初は声を低めに、テンポもゆっくり話し始めて、話が盛り上がってきたところで、早口にしろ。声のボリュームやトーンもそこから上げていったほうがいい」そう、何度も何度も言われました。

「おもしろい話をしよう」「相手を驚かせよう」などと考えると、どうしてもトーンが上がったり、いきなりテンポが早くなったりしがちです。

 たとえば、「昨日のテレビがいかにおもしろかったか」を伝えようとして、いきなりテンションマックスで「昨日さ! めっちゃおもしろかったんだけどね!」とまくし立ててしまう人がいます。

 しかし、そんな話はたいていまわりがついていけずにシラケてしまいます。話し手ばかりが盛り上がって、まわりはどんどん冷めていく。そんな光景を見たことのある人も多いのではないでしょうか。

 経験が浅い若手芸人たちも、同じ状況に陥ることがよくあります。結果を残そうと、話を振られた瞬間からテンションマックスでトーン高め、早口でまくし立てる。そんな姿をよく見かけますが、これだとやはり「これからおもろい話をします!」「頑張ってます!」という雰囲気がダダ漏れで、ハードルは爆上がり。自分で自分の首を締めているような状態です。

ゆったりと話し始める人が、結局すべてを勝ちとる

 ちなみに、「出だしゆっくり、声低め」は笑いに限った話ではありません。以前、僕のところに「就活の面接でうまく話せないけれど、どうしたらいいか」と相談がありました。

 ここで僕がアドバイスしたのも「トーンを低く、ゆっくりと話し始めてみて」でした。自分の優秀さをアピールしようとする人ほど、テンションもトーンも高くなり、話すテンポも上がります。

 しかし、そんなしゃかりきな人より、ゆったり落ち着いて話すほうが”できる人”に見えますし、注目も集まります。話す内容もしっかり伝わるでしょう。

 ほかにも、スピーチやプレゼン、打ち合わせでの発言など、さまざまな場面でこれを意識するだけで、話もウケやすく、良い結果を残せるでしょう。

(本原稿は、芝山大補著『おもろい話し方 ~芸人だけが知っているウケる会話の法則』からの抜粋です)

芝山大補(しばやま・だいすけ)
ネタ作家
1986年兵庫県生まれ。2007年、NSC大阪校に入学。2009年、2011年には、それぞれ別のコンビでキングオブコント準決勝進出。2015年にはフワちゃんと「SF世紀宇宙の子」を結成。同コンビを解散後は、ネタ作家に転身。賞レースのファイナリスト、セミファイナリストなど、芸人300組以上のネタ制作に携わる。2019年からは、「笑いの力で人間関係に悩む人を救いたい」という想いから、お笑いの技術を言語化して伝える「笑わせ学」に取り組む。講義やイベントでの指導、YouTubeやTikTokでの活動を通じて、多くの人に芸人の技術を伝えている。発売即重版となった初の著書『おもろい話し方』が絶賛発売中。