中小企業は調達コストが増える一方で価格転嫁は容易ではない(写真はイメージ) Photo:PIXTA
昨年秋に高市早苗政権が発足して以降、円安の傾向が一段と強くなっている。背景には、高市首相が円安をポジティブに考えている節があるのではないか。「円安で外為特会はホクホク」発言もあった。確かに、円安は輸出企業の収益をかさ上げするプラス要素もある。しかし中小企業や一般消費者にとっては重大なマイナスの要素もある。今のままでは「円安倒産」や「円安格差」が拡大することになりかねない。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)
歯止めがかからない円安…
潤う大企業と苦しむ中小企業や一般庶民
円安の進行により、わが国にはさまざまな影響が出ている。大手企業は円安で業績が拡大し、新NISAなどを通して海外株に投資し利得を手にする人も多い。対照的に、原材料を輸入に頼る中小企業、一般消費者は輸入物価の上昇で苦しむ構図がある。
特に、中小企業へのマイナス影響は無視できない。調達コストは増える一方でありながら、価格転嫁は容易ではないからだ。中小企業を取り巻く事業環境の厳しさは増している。ある信用調査会社の調べでは7月の倒産件数は13年ぶりの高水準になった。
夏休みの家族旅行をハワイなど海外ではなく近場、なおかつ円安の影響を受けにくい場所で過ごそうとする人も増えた。統計上、6月まで6カ月続けて日本の実質賃金はプラスだったが、「生活にゆとりはない」というのが一般庶民の実感だろう。
翻って7月末から8月初旬、日米政府と中央銀行による協調介入により一時は1ドル=155円台に反発した。円安が進む状況は、米国にとっても好ましくないと判断され、約28年ぶりの日米の協調介入が実施されたのだ。
ところが、それでも円安のトレンド反転にはならなかった。むしろ、大手投資家は協調介入を「円キャリートレードの好機」と捉える向きもあったようだ。
この背景には、わが国の財政規律の「緩み」と、日銀の金融政策の「遅れ」があるだろう。投資家から見て、この2つの要素が解決されないと、円安に歯止めがかからないのではないか。







