安倍元首相Photo:Kent Nishimura//gettyimages

安倍晋三元首相亡き後の「インド太平洋」構想や「Quad」、対中戦略の行方とは?米有力シンクタンクのハドソン研究所で研究員を務め、2020年まで3年間ワシントンに滞在して研究活動を行っていた長尾賢氏の特別寄稿をお届けする。

安倍元首相の功績で特筆すべきは
世界を変えた対中戦略

 2022年7月は、世界の歴史を動かす月になったと言っても過言ではない。安倍晋三元首相の暗殺に対する世界の反応は、同氏が世界にどれほどの影響を与えていたのかを見せつけた。

 米国は半旗を掲げ、インドをはじめ、ブラジル、ブータン、キューバなども、国を挙げて喪に服した。Quad(日米豪印4カ国の枠組み、クアッド)における日本以外の3カ国、米豪印の首脳が共同で声明を出すほどであった。

 これほどの影響力を持つ安倍氏が暗殺された中、心配なのはこの先の行方だ。そして同氏の功績の中でも、最も取り上げられるべきだと考えるのは、対中国を巡る戦略である。

 今後、その方向性はきちんと引き継がれていくのか。同氏亡き世界の「インド太平洋」や「Quad」の行方、懸念事項とは何か。

 本稿では、安倍氏の外交面における功績を3つのポイントに大別し、それぞれ概観するとともに、日本の外交・安全保障の行方をも左右する今後の注目点を展望していく。