ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受け、安倍晋三元首相は民放の番組で欧州の核共有について言及し「タブーなき議論」が必要だと主張した。日本の国是である非核三原則に反する核共有になぜ触れたのか。『混迷ウクライナ』の#13では、安倍元首相への単独インタビューで真意に迫った。
プーチン氏が安倍氏に語っていた
ウクライナ侵攻の背景
――ロシアのプーチン大統領とは過去27回、首脳会談を行いましたが、彼はなぜウクライナ侵攻をしたのだと考えていますか。
プーチン氏は米国に強い不信感を持っています。その不信感がどこから来るかといえば、NATO(北大西洋条約機構)の拡大です。東西ドイツ統一についての議論の中で1990年、米ブッシュ政権のベーカー国務長官がソ連のゴルバチョフ党書記長(肩書は全て当時)と会い、NATOについて「1インチたりとも範囲を東方に拡大しない」と述べています。
しかしNATOはポーランド、チェコ、バルト3国とどんどん拡大しました。これについてロシアは「だまされた」という思いを持っているわけです。
米国は「1インチたりとも拡大しない」と述べたことは認めていますが、それは交渉の過程での一つの理論であり、条約の中には書かれていないという立場です。約束ではないし、密約でもないのだと。この「NATO拡大は約束を破ったものだ」という不信感について、私が会った中でもプーチン氏は触れていました。
――プーチン氏がウクライナに対し、軍事侵攻に踏み切ることを予想していましたか。