なぜ日本の家計はゼロ利回りの預貯金を偏重してきたのか
以上の通り、日本の家計資産構成はより豊かになる可能性がありながら、それを放棄してきたとしか言えない。欧米に比して預貯金に偏した資産構成はなぜ執拗に続いているのだろうか。米国の家計の資産構成との比較で考えてみよう。
この問題については、アカデミズムの諸研究を含めてこれまで様々な議論、研究があったが、ざっくりと分類すると以下の通りだ。
仮説その1:「日本人は米国人に比べてリスク回避的な性向が強い」
これは最もポピュラーな説だがほぼ俗説であり、これまでの心理学的な調査ではあまり支持されていない。
仮説その2:「日本の株式市場では同じリスクで得られるリターンが米国より相対的に低い」
日本のバブル崩壊期の1990年代から2000年代前半まではその通りであり、日本の株式を対象にした長期・分散の投資のリターンは、長期国債との比較で低く、この時期の日本ではリスクに見合った投資リターンが成り立っていなかった。
しかしバブル崩壊による銀行の不良債権処理がおおむね終了した2004年以降、日経平均やTOPIXなど株価指数に見る投資リターンは回復し、無リスク資産としての国債投資のリターンを十分に上回るリスクプレミアムを上げており、説明力は十分ではない。
仮説その3:「日本では住宅購入の負担がリスク性資産投資を抑制した」
1991年をピークとする不動産バブルでは、例えば東京都の住宅価格は家計の年収比で10倍を超えた。一方、当時の米国では平均的な住宅価格は平均年収の5倍程度だった。日本の家計は持ち家を取得するまで、住宅購入の頭金準備で貯蓄するが、住宅購入後は住宅ローンの返済が重く、リスク性金融資産で資産形成をする余裕が乏しいという説明である。
これは確かにバブルとその前後の時代には適合する説明だ。しかし不動産バブル崩壊後の1990年代後半からは、都市部でも住宅価格は家計年収比5倍前後と米国を含む当時の他の主要先進国と変わらない水準まで下落した。従って、説明力は部分的なものにとどまる。



