新しい世代への期待

 米国では、今日では長期・分散投資の定番となった株価指数(インデックス)連動の投資ファンド(mutual funds)が1970年代後半に開発され、1980年代にはIRA(個人退職口座、Individual Retirement Account)や401Kと呼ばれる確定拠出型の個人年金の普及とともにそれが広がった。そして幾度もの株価の暴落を経ながらインデックス連動の投資が長期で高いリターンを上げることが、中間所得層から高所得層まで広範囲に体験的に学習されたと言えるだろう。

 一方、日本ではインデックス投資が間の悪いことに1990年前後のバブル崩壊の開始期に導入された。また確定拠出年金が始まったのも2000年代になってからであり、伝統的な確定給付年金から確定拠出年金への移行が遅れた。

 しかも日本の団塊の世代(1947~49年生まれ)がちょうど40歳代になり所得が増え本格的な資産形成に向かう時期だった1990年代にバブル崩壊と株価低迷が重なった。その結果、株式投資、住宅購入などで痛手を負った団塊の世代の多くが、株や不動産などリスク性資産投資について非常にネガティブな認識を持ってしまったのだろう(履歴効果)。

 今の希望はそうした負の履歴から自由な若い世代の間で、つみたてNISA(少額投資非課税制度)や確定拠出年金を利用した株式インデックス投信で定額積立投資を始める人々がじわじわと増えていることだ。

 最後に若い世代に一言アドバイスしよう。最近の人気投信として米国株価指数に連動するものが最も買われているという。それはそれでよいが、リスク分散が重要だ。そのためには日本の株価指数を含める、あるいは世界全体の株価指数に連動したものを選ぶことを考えた方が良い。

 そして定額積立投資を一度セットしたら、金融・投資関係が本業でない限り、相場や時価総額など頻繁に見ずに、本業に専念するのが効率的だ。短期の相場変動など気にするだけ心理的な徒労で、百害あって一利無しだからだ。

 岸田内閣は年内に「貯蓄から投資へ」の具体策を公表すると言っており、つみたてNISAなどの限度額の拡大、期間の恒久化などが有望視されているという。日本のミドルクラスの資産形成を支援する大胆な施策が実現することを期待している。

補注1:「資金循環の日米欧比較」日本銀行調査統計局、2021年8月から
補注2:この過去株価指数データに基づく定額積立投資のシミュレーションは、NPO法人「みんなのお金のアドバイザー協会(FIWA)」のサイトで開示している筆者開発の投資シミュレーションソフト(プロトタイプ版無料)で簡単にできる。
補注3:グローバルノート - 国際統計・国別統計専門サイトから

(竹中正治 龍谷大学経済学部教授)

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