「岸田首相よ、『聞く』のは政治家の商売じゃない」亀井元金融相の“危険球”の直言Photo by Masato Kato

岸田文雄首相が政権に就いて1年。党改革や「新しい資本主義」を掲げて、「安倍・菅政治」からの変化を期待させたものの、岸田色は出せないまま支持率は急降下している。首相は3日の臨時国会の所信表明演説で「日本経済の再生が最優先課題」として、物価高への対応を柱にした総合経済対策策定や、人への投資などによる「構造的な賃上げ」などを掲げ、また安全保障情勢の悪化に対応する新たな国家安全保障戦略の策定や「防衛力の5年以内の抜本的強化」を打ち出し、反転攻勢を狙う。「岸田政治」のこの1年をどう見るのか、政権浮揚の鍵は何なのか。保守タカ派で、岸田首相とは政治信条や肌合いは正反対だが、強烈な個性と行動力で、永田町で存在感を示した元自民党政調会長で元金融担当相の亀井静香氏に聞いた。相変わらずの亀井節は、「危険球」すれすれの発言も少なくはないが、岸田首相に何が足りないのかを示唆する。(聞き手/ダイヤモンド編集部特任編集委員 西井泰之)

俺はこれをやるというのが政治家
何もしないのでは日本は大変になる

――「一緒にやっていく相棒が見つかりそうにない」と政界を引退しましたが、岸田政権のこの1年をどう見ていますか。今年春ごろまでは高かった支持率は急降下しています。

 政権発足当初、しばらく支持率が高かったのは、新政権ということでまだ期待はあったし、何もしなかったから、いわば可もなく不可もなくということだったのだと思う。

 だが、ロシアのウクライナ侵攻があり、資源やエネルギー価格だけでなく物価が上がり、一方で賃金が上がらないから国民の生活は厳しくなるばかりだ。中国の海洋進出や米中対立激化で日本の安全保障への不安も強まるなど、いろんなことが重なってきている。

 首相の人柄は良いけれど、やることをやらないのでは意味がない。「聞く力」とかをアピールしているけれど、俺はこう思うからこれをやるというのが政治家。人の言うことをただ聞くのは政治家の商売じゃない。

――経済政策では、当初は分配重視の「新しい資本主義」を掲げていましたが、金融所得課税の強化を言って株価が下落すると、すぐに引っ込めてしまいました。最近では資産倍増計画ということで、NISA(株式などへの少額投資非課税制度)の拡充などを掲げて、格差を広げるような逆方向にいっているように見えます。

「新しい資本主義」は中身も、そもそも何を目指しているのかもよくわからない。岸田首相が目指しているのが所得再分配ということなら、やるのは簡単だ。