岸田文雄首相Photo:Anadolu Agency/gettyimages

迷走の末、やっとまっとうな目標に 
決して簡単ではない課題

 岸田文雄首相は、所信表明演説で、「正面から果断に『構造的な賃上げ』の実現を目指す」とした。

 11月8日に閣議決定された総合経済対策でも、賃上げした企業や従業員のリスキリング(学び直し)を支える企業への助成拡充などが盛り込まれている。

 これまでの政府の政策で、「賃金の引き上げ」は申し訳程度に言及されることはあっても、経済政策の主要な(ましてや最重要の)目的とされることはなかった。

 日本銀行の異次元金融緩和政策も、物価上昇率を目標としたが、賃金上昇率については何も目標を示さなかった。

 安倍政権も春闘への介入や賃上げ税制創設などは行ったが、こうした散発的な政策で賃金が上がることはもちろんなかった。

 岸田政権の賃金や所得に関する政策もこれまで方向が目まぐるしく変わった。

 分配を強調し、金融所得課税の強化を打ち出したが、株価下落という反応にあって急遽、方向転換。「令和版所得倍増計画」も具体的な内容ははっきりせず、そのうち、「資産所得の倍増」という、金融所得課税とは正反対の方向が唐突に打ち出された。

 支離滅裂としか言いようのない迷走だったが、やっと賃金を上昇させるという「真っ当な」目標が明確に打ち出された。このこと自体は、たいへん結構なことだと思うが、決して容易な課題ではない。