岸田首相が、今後5年間で1兆円を「リスキリング」(スキルのアップデート)の支援に投じる方針を打ち出しました。成長産業で働く人を増やし、構造的な賃上げを図る目的があるといいます。政府の後押しを受け、企業が人への投資を積極的に行う機運が高まる中、30~40代前後の中堅世代やベテラン社員がリスキリングをして前向きに働くには、どんな取り組みが必要なのでしょうか。(一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ代表理事 後藤宗明)
AIに代替されないためにも
重要なのが「リスキリング」
岸田文雄首相が10月初旬、秋の臨時国会における所信表明演説で、「リスキリング」の支援に今後5年間で1兆円の予算を投じる方針を示しました。
注目度が高まっているリスキリングとは、「新しいことを学び、新しいスキルを身に付け実践し、そして新しい業務や職業に就くこと」だと筆者はいつも説明しています。
また、リスキリングは基本的に、個人ではなく企業が進めるものです。企業によっては、従業員が新しいスキルを学ぶ時間やプログラムを導入し、働く人々の職業能力の再開発を行っている事例もすでにあります。
企業がリスキリングを行う際、社員にどんなスキルを学んでもらうかについては、「所属部署で将来必要となるスキルがどのようなものか」を明らかにした上で、彼らの希望するキャリアプランと丁寧にすり合わせていく必要があります。
ただし、全ての企業に、社員のリスキリングを行う余裕があるとはいえません。組織にリスキリングの環境がない場合には、個々人がキャリアチェンジを目的として新しいスキルを体得していくことも必要になります。
そこで本稿では、働く個人の視点から、新しいスキルを主体的・自主的に身に付けていく方法を解説します。