インフレは米経済にとって最大の問題だ。米連邦準備制度理事会(FRB)はこれを理解し、状況に適応してきた。一方、議会とジョー・バイデン大統領はいまだにそうした姿勢を示していない。確かに、議会を通過する可能性の高い大規模な包括的歳出法案には、新たな大型景気刺激策は含まれていない。今後数年間に財政赤字を何千億ドルも増やし、インフレ圧力を高めるはずだった法人減税や児童税額控除の拡充、医療支出の増加は、すべて法案から除外された。バイデン大統領は過去2年間、財政赤字と歳出を拡大する大統領令や法案に日常的に署名してきており、今回の法案は転換点と言える。とはいえ、超党派で政策提言を行う非営利団体「責任ある連邦予算委員会(CRFB)」によると、包括的歳出法案では、来年の非国防・非緊急支出は8%、国防支出は10%それぞれ引き上げられる。現在のインフレ率である7%を超える増額幅だ。つまり、この法案は需要とインフレ圧力を弱めるどころか、強めることになる。昨年は一連の同様の法案により、支出が合わせて約6%増加した。今年の緊急支出は850億ドル(約11兆2600億円)で、昨年の約150億ドルを大幅に上回っている。