復権を掛けた都立高校改革

 東京都は、私立や国立の中高に通う生徒の割合が全国でも突出して高い。小学校から中学校に進む段階で、中学受験により4分の1の子どもが地元の公立中学以外へ進学している。その多くは私立の中高一貫校である。

 公立中学の卒業生を都立と私立でどのくらいずつ受け入れるか、都の教育委員会と東京私立中学高等学校協会とで調整が図られ、毎回ほとんどけんかのような協議により、その枠が決まっていった。少子化にいち早く備えるため、私立校が先行して中高一貫化により中学校から生徒を確保するように切り替えていった。

 一方で、公務員の削減圧力は、都立高校の統廃合と相まって、教員に対しても容赦なく進められることになる。都立高校全体としては、生徒の中途退学率の引き下げが課題だったものの、全盛期の神奈川県立湘南高校OBでもある石原慎太郎・都知事の時代には、私立にその地位を大きく奪われた都立進学校のあり方が見直されるようになる。

 図2図3は、都内公立高校の国公立100大学の2022年「合格力ランキング」である。一般的には、東京大合格者数ランキングで進学校の度合いを測る傾向が強いが、このランキングは、卒業生数に対する対象国公立大への合格割合を考慮した指数を「合格力」として表している(算出方法はこちらを参照)。

 進学力を強化した新しいタイプの高校として、2001年9月に4校(日比谷、戸山、西、八王子東)を指定したのが進学指導重点校で、2年後には3校(青山、立川、国立)が追加される。図2に☆☆☆で示したが、日本社会のリーダー育成のため、優秀な教員を重点配置するとしたこれら7校は、いずれも旧制ナンバースクールであり、かつての都立名門高校でもある。「難関国公立大学等」として、東京大、京都大、一橋大、東京工業大、国公立医学部医学科の合格者数が各校の目標値に掲げられている。主に私立の難関校と張り合うことが期待されているわけだ。

 学区の撤廃(03年)に続いて、今度は進学指導特別推進校が7校(小山台、駒場、新宿、町田、国分寺、国際、小松川)と進学指導推進校が15校指定されている。図2と図3では、それぞれ☆☆と☆で示してある。こちらは国公立大と難関私立大の合格者数が目標に掲げられており、私立上位校がライバルといえるだろう。

 図2と図3に示した上位40校には、進学力を強化するとしたこれら29校中27校が入っている。ランク外は、隅田川以東にある54位江北(足立区)と57位江戸川(江戸川区)にとどまる。このことは都内の格差を如実に示している。

『学校基本調査』に見る23区内の大学等進学率(22年度)は平均67.3%で3人に2人だが、1位千代田区77.8%、2位渋谷区は77.7%、3位文京区74.6%と上位の区では4人に3人が進んでいるのに対して、23位足立区は40.9%と突出して低い。高校の学費無償化、中学受験の隆盛の影響が、東京東部にあるような都立の中堅校に大きく出ていることも反映している。