インフレ・円安の時代に入った今、資産を預金だけで持つことはリスクがあり、おすすめできない。「先行き不透明な時代」には、これまで投資に無縁だった人も資産を守り・育てるために資産運用を始める必要がある。『このままではあなたの現金の価値が下がる! インフレ・円安からお金を守る最強の投資』(朝倉智也著、ダイヤモンド社)が3月29日に発売された。本書は、投信業界のご意見番が新しい時代を乗り切る「究極の運用法」をアドバイスするお金の入門書だ。大切なお金を守り増やすためには、どうすればいいのか? 本連載では、特別に本書から一部を抜粋・編集してその要旨をお伝えしていく。

大事なお金を守り増やすための、たった1つの確実な方法Photo: Adobe Stock

資産を守り増やす「方程式」とは?

 ここで、資産を守り増やすための方程式について考えてみましょう(下図)。

 皆さんが形成する金融資産は、「(収入-支出)×運用利回り」で計算することができます。収入から支出を差し引いた残りをどの程度の利回りで運用するかによって、形成できる資産額が決まるわけです。

 では「金融資産=(収入-支出)×運用利回り」を増やすには、どうすればいいでしょうか?

 まず考えられるのは、収入を増やすことです。しかし収入を増やすのは簡単なことではありません。もちろん、今後は大企業を中心として賃金を引き上げる企業も出てくると考えられますが、日本で99%以上を占める中小企業が賃上げに踏み切ることは、あまり期待できないのではないかと思います。

 また、仮に賃金が引き上げられたとしても、物価上昇率を上回るまで賃金水準が上がらなければ、実質賃金は低下する点も考慮する必要があります。

運用利回りを上げる方法を考えないと
いけない時代に

 では、支出を減らすのはどうでしょうか?

 日用品や食料品はもちろん、公共交通機関の運賃引き上げなど、物価がどんどん上昇していく中では、生活水準を変えなくても支出が拡大していくことになります。支出削減は相当な努力が必要になるでしょうし、物価上昇の程度によっては、ほとんど不可能と言わざるをえない状況になることも考えられるでしょう。

 こう考えると、③運用利回りを上げることしか残された方法はありません

 これまでの日本ではデフレ環境が続いていたため、収入が上がらなくても物価は低下傾向にありました。ですから運用利回りがほとんどゼロに近く、資産をまったく増やすことができなかったとしても、資産を守ることはできました。

 しかしデフレからインフレへと環境が激変しつつある今、運用利回りがほとんどゼロのままでは、資産を増やせないどころか守ることさえできません。

 皆さんは、資産を目減りさせず、できることなら増やしたいとお考えでしょう。そうであるならば、これからはいかに運用利回りを上げていくかを考えなければならないのです。

(本稿は『インフレ・円安からお金を守る最強の投資』の一部を抜粋・編集したものです)

朝倉智也(あさくら・ともや)
SBIグローバルアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
1966年生まれ。1989年慶應義塾大学文学部卒。銀行、証券会社にて資産運用助言業務に従事した後、1995年米国イリノイ大学経営学修士号(MBA)取得。同年、ソフトバンク株式会社財務部にて資金調達・資金運用全般、子会社の設立、および上場準備を担当。1998年モーニングスター株式会社(現 SBIグローバルアセットマネジメント株式会社)設立に参画し、以来、常に中立的・客観的な投資情報の提供を行い、個人投資家の的確な資産形成に努める。SBIホールディングス株式会社 取締役副社長を兼務し、SBIグループ全体の資産運用事業を管掌する。主な著書に『全面改訂 投資信託選びでいちばん知りたいこと』『改訂新版 ETFはこの7本を買いなさい』『一生モノのファイナンス入門』(以上、ダイヤモンド社)、『「iDeCo」で自分年金をつくる』(祥伝社新書)、『お金の未来年表』(SB新書)などがある。