インフレ・円安の時代に入った今、資産を預金だけで持つことはリスクがあり、おすすめできない。「先行き不透明な時代」には、これまで投資に無縁だった人も資産を守り・育てるために資産運用を始める必要がある。『このままではあなたの現金の価値が下がる! インフレ・円安からお金を守る最強の投資』(朝倉智也著、ダイヤモンド社)が3月29日に発売される。本書は、投信業界のご意見番が新しい時代を乗り切る「究極の運用法」をアドバイスするお金の入門書だ。大切なお金を守り増やすためには、どうすればいいのか? 本連載では、特別に本書から一部を抜粋・編集してその要旨をお伝えしていく。
日本円は、歴史的な円安水準に
2022年は、急速に進む円安が私たちを直撃しました。10月には1ドル=150円台まで円安が進み、1990年8月以来となる32年ぶりの円安ドル高水準に達したことが、大きなニュースにもなりました(下図)。
円安による輸入物価高騰の影響は、広く私たちの生活にも及びます。多くの人が固唾を呑んで為替相場を見つめていたのではないかと思います。
「金利が高い通貨」が買われ、
「金利が低い通貨」は売られる
今後はどうなるのでしょうか? 2022年に円安が進行したのは、各国の中央銀行が物価上昇を抑えようと金利を引き上げる中、日本(日本銀行)だけが金融緩和を続けていた(金利を引き上げなかった)ことが背景にあります。
そもそも為替は需給(需要と供給)で決まるものであり、円を買いたいと思う人が多ければ円高になり、逆に円を売りたいと思う人が多ければ円安になるわけです。需給にはさまざまな要素が影響を与えますが、「金利が高い通貨が買われ、金利が低い通貨は売られる」ものです。
日銀が2022年12月に金融緩和を実質的に解除したことをふまえれば、今後は日米の金利差が縮小し、為替相場が円高に振れるという見方もできます。
しかし長期的には、経済が強い国の通貨こそ買われるもの。そして皆さんご存じのとおり、経済の強さは人口動態に大きく左右されます。日本は今後、人口が減少し、国力の減退が避けられないことが明白ですから、一時的に円高になることはあっても、強烈に円高が進行することはないのではないかと考えられます。
このことを前提としたとき、私たちは「円安=円建て資産の価値の下落」であることに目を向けなくてはなりません。
私たちは日本で生活しており、給料も年金も円で受け取りますから、資産運用の中心が円になるのは当然のことです。
しかし円の価値が下がるということは、世界の中で見れば私たちの資産が減価することを意味します。実際、かつて1ドルが70円台だったときと比べれば、世界から見た私たちの資産はほぼ半減しているわけです。
下図をご覧ください。仮に今、1000万円の資産があるとしましょう。1ドル=100円の場合、1000万円には10万ドルの価値があります。
ここから円高が進んで1ドル=80円になった場合、1000万円は12万5000ドルの価値を持ちます。一方、円安が進んで1ドル=150円になれば、1000万円は6万6666ドルの価値しか持たない計算です。
当然のことながら、海外製品を購入するにしても、海外旅行に行くにしても、海外留学するにしても、海外の不動産を買うにしても、日本人にとっては円高のほうが望ましいのです。
(本稿は『インフレ・円安からお金を守る最強の投資』の一部を抜粋・編集したものです)
SBIグローバルアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
1966年生まれ。1989年慶應義塾大学文学部卒。銀行、証券会社にて資産運用助言業務に従事した後、1995年米国イリノイ大学経営学修士号(MBA)取得。同年、ソフトバンク株式会社財務部にて資金調達・資金運用全般、子会社の設立、および上場準備を担当。1998年モーニングスター株式会社(現 SBIグローバルアセットマネジメント株式会社)設立に参画し、以来、常に中立的・客観的な投資情報の提供を行い、個人投資家の的確な資産形成に努める。SBIホールディングス株式会社 取締役副社長を兼務し、SBIグループ全体の資産運用事業を管掌する。主な著書に『全面改訂 投資信託選びでいちばん知りたいこと』『改訂新版 ETFはこの7本を買いなさい』『一生モノのファイナンス入門』(以上、ダイヤモンド社)、『「iDeCo」で自分年金をつくる』(祥伝社新書)、『お金の未来年表』(SB新書)などがある。