先日、回転ずしチェーン「スシロー」が、しょうゆ差しをなめる迷惑動画をめぐって、客の少年に対し約6700万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴した。また2月に投稿された「くら寿司」での迷惑動画をめぐっては、少年少女を含む計3人が愛知県警に逮捕されている。回転寿司チェーンに限った話ではないが、こうした「飲食店テロ」の代償は非常に高い。逮捕、賠償金、さらには顔写真や実名がデジタルタトゥーとしていつまでも残ってしまう。それなのに、リスキーな迷惑動画の投稿は、なぜなくならないのだろうか?その理由は大きく3つある。(アステル 岩瀬めぐみ)
SNSの「飲食店テロ動画」騒動は、
2007年の「テラ豚丼」から始まった
国内における迷惑動画は、2007年にニコニコ動画に投稿された「テラ豚丼」動画が最初だといわれている。牛丼チェーン店のアルバイト店員が、店舗内で豚丼の具を大量に盛り付けるという内容で、「不衛生だ」などという批判が起きた。
アルバイト店員が職場で迷惑行為を行って写真や動画を投稿する行為は、「バイトテロ」と呼ばれる。コンビニの従業員が店のアイスクリーム用の冷凍庫に入り込んで商品の上に寝そべった写真をFacebookに投稿するなど、2013年にはバイトテロが頻発して世間やマスコミを大いに騒がせた。
今回、回転寿司チェーンで起きた騒動では、「くら寿司 名古屋栄店」で行った迷惑行為を撮影して動画をSNSに投稿した男女3人が逮捕されたことや、先に同様の被害に遭った「スシロー」が刑事・民事の両面からの厳正な対処を表明したことなども世間の注目を集めた。
しかし上述の通り、迷惑行為の投稿と炎上は15年ほど前から何回も繰り返されている。迷惑行為を撮影してSNSに投稿したことで逮捕などの手痛い代償を払うことになった事例も、別に今回が初めてではない。
例えば、バイトテロを行った当事者たちは身元を特定されて個人情報をさらされたり、学校を退学になったり、バイト先を解雇されたり、損害賠償請求をされたりしている。また、2016年にはコンビニのおでんを指でつつく動画をSNSに投稿した20代の男が、威力業務妨害などの容疑で逮捕された。逮捕を受けて、テレビニュースで男性の実名が報じられ、モザイクなしの顔写真や動画が流されたことを覚えている方も多いだろう。
このように、迷惑行為が炎上した際の代償は安くない。なにより、一度インターネット上で公開・拡散された画像や動画は、さらされた個人情報とセットになってネットに残り続け、一生消えないデジタルタトゥーになってしまうのだ。それなのになぜ、こうした迷惑写真・動画による「飲食店テロ」はなくならないのだろうか?