「かつて、活版印刷が庶民に情報を手にする機会をもたらし、インターネットが情報発信の機会を与えたように、ブロックチェーンは誰もが確かな情報を記録し利用できる機会を与える存在となる」。ブロックチェーン関連事業のスタートアップ、Ginco創業者で書籍『超入門ブロックチェーン』(エムディエヌコーポレーション)などの解説書を著してきた森川夢佑斗氏は、そう語る。
確かな情報を記録する力が最初に発揮された「価値の記録」の領域で、ブロックチェーンはどのように利用されているのか。「記録の技術」がたどってきた歴史的な背景からブロックチェーン技術誕生の意味を解説した前回に続き、「ブロックチェーンは、アナログと最新テクノロジーの融合のために生まれてきた」と考える森川氏が、アートやブランド品の世界でブロックチェーン技術やNFTが果たす役割について、事例も交えて紹介する。
※本稿は、森川夢佑斗『超入門ブロックチェーン』(エムディエヌコーポレーション)を一部抜粋・再編集したものです。
世界のアート市場で偽造品による被害額は年間48億ドルと推定
アート作品の取引では、来歴を証明できるかどうかが非常に重要視されます。そこには「価値のつき方」と「真贋管理の難しさ」という2つの問題があります。
まずアート作品の価値については、「最初が最高値で中古品は安い」という市民的な感覚に反し、新品が最も安値で、所有者が移転するたびに価値が高まっていくという性質があります。