
日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月曜から金曜までチェックし、当日の感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年続けてきた著者による「見なくてもわかる、読んだらもっとドラマが見たくなる」そんな連載です。本日は、第97回(2025年8月12日放送)の「あんぱん」レビューです。(ライター 木俣 冬)
戦力外通告を
言い渡されたのぶ
のぶ(今田美桜)、クビになる。
鉄子(戸田恵子)はのぶに戦力外通告を言い渡した。ただし、仕事の世話はすると、商事会社の秘書の仕事を紹介すると言うのだが……。
「お互いのためにこれが一番いい方法なのよ」
「ここにいてもあなたの探しているものは見つからないわ」
ときっぱり。
そして「6年間、ご苦労さまでした」という言葉に込めた力と深く下げた頭には有無を言わせないものがあった。
いや、まあ、昨日ののぶの様子だとこうなるのも無理もない。昨日のレビューの繰り返しになるが、辞めさせられたくないのだったら下手に出て、鉄子の言うようにすべき。にもかかわらず、勝手にスケジュールを変更したりするのだから、のぶのやっていることはちょっとおかしい。でもそれを鉄子は「清らか」と言う。
「のぶさんみたいに清らかな人にはあての秘書は務まらんき」
鉄子はまた、八木(妻夫木聡)の店に来て、そう言った。
八木は、鉄子のなかに残っている清らかなものを刺激されるからこわいのではないかと指摘する。
「自分の清らかな部分を思い出して泥水飲めなくなりそうで」
図星だったのだろう。鉄子は、もうここには来ない、と足早に去っていく。この日もまた孤児のつくったカードを物色していたが、買わずに去っていった。
ずんずん去っていく「背中」がこの回のポイントだ。