短期間で英語を話せるようになりたい――そんな人に試してほしい1冊が『中学英語だけで面白いほど話せる!見たまま秒で言う英会話』だ。「イラストを見る→見たままを英語にする」を繰り返すことで、日本語を介さずに瞬時に即答する「英語の反射神経」を鍛えることができる。実践的な話す力を養うための最適な1冊だ。本稿では著者の森秀夫さん(麗澤大学外国語学部教授)に「英語学習にまつわる誤解」について話を聞いた。

「聞き流しで英語は身につく?」英語教育の専門家が納得の回答Photo: Adobe Stock

多くの人が抱いている「英語学習の誤解」

――『中学英語だけで面白いほど話せる!見たまま秒で言う英会話』の冒頭で、英語学習のやり方を根本から見直すことを提唱されていますが、英語を話せるようになるためには、どのような学習が効果的なのでしょうか?

森秀夫(以下、森):多くの日本人が、英語学習に対していくつかの誤解を抱えています。中学や高校時代に、英語の授業をたくさん受けても話せるようにならなかった経験から、先入観を持ってしまっているのかもしれません。

 英語を話せるようになりたいと思ったら、まずはこの誤解を解いて、英語に対する考え方を変える必要があると思います。

【英語学習にまつわる誤解】

・聞き流しで英語力が伸びる。
・才能のある人だけが英語を話せるようになる。
・英語を習得するのに大人になってからでは遅すぎる。
・ネイティブ・スピーカーが一番良い英語の教師である。
・3ヵ月程度留学すれば、苦労せずに英語が身につく。

:それぞれの誤解について、一つずつ紐解いていきましょう。

聞き流すだけで、英語は身につきますか?

――「聞き流すだけで英語力が伸びる」という話を聞くことがありますが、実際のところどうなのでしょうか?

:ネイティブ同士が自然なスピードで会話をしている音声を聞き流すだけでは、学習の効果はほとんど期待できません。

 少なくとも、会話についていけるレベルの英語力がある人でないかぎり、ラジオなどを聞いても、意味の分からない言葉がただ流れている状態になってしまいます。

 コンテンツも自分の興味に合うものとは限りませんよね。興味が持てない会話を聞くのは退屈で長続きしないでしょう。そのような英語を聞き流しても、意味がありません。

 英語を聞いて学習の効果を上げるには、いくつか注意すべき点があります。

【英語力を効果的に伸ばす聞き方】

① 自分の興味とレベルに合うコンテンツを選ぶ。英単語や英文の構造、内容を理解できるコンテンツを選ぶ。
② 継続的に同じ英語を何度も聞き続ける。
③ 聞くだけでなく、シャドウイングなどのアウトプットも行う。
④ 聞き取れなかった部分にフォーカスして、繰り返し聞く。
⑤ 聞き取った内容を自分の言葉でリテリングする。

 

※シャドウイング:英語を聞きながら、後から音声を追いかけて発音を真似すること

※リテリング:聞いたり読んだりした内容について自分の言葉で話すこと

:英語は母語ではなく外国語ですので、身につけるには、聞き流すのではなく、積極的に聞くことが求められます。

 そのため、聞くだけでなく、シャドウイングやリテリングなどのアウトプットが有効になるのです。

 特に中学生以上の学習者には、母国語がすでに定着しているため、英語の習得には意識的なトレーニングが求められます。

大人になってからでは遅いですか?

――ある一定の年齢を超えると、英語を身につけるのは難しいのでしょうか?

:外国語の学習においては、若ければ若いほど良いと思っている人が多いと思います。

 しかし、外国語学習に臨界期(適齢期)があるかどうかということに関しては、研究者の間で意見が異なっています。​

 一般的に、英語を良い指導者のもとで幼少期から始めると、良い発音が身につきやすいと言われています。それは、幼少期の方が、英語の発音を恥ずかしがらずに、聞こえたとおりに練習をするからです。

 一方で、英文法などについては、大人は認知能力が高く、分析的な学習が得意だと言われています。効率よく英語を身につけることも可能だと言えます。

 ですので、年齢を理由に英語を諦めることはやめましょう。あなたが何歳であっても、英語を話せるようになりたいと思った時点で、英語の学習を始めてください。

語学の才能がなければ、話せるようにならないのでしょうか?

:また、「英語を話せる人は、才能があるから」と考える人がいますが、これも思い込みです。

 たしかに、人には「記憶力がよい」「リスニング力が優れている」「話すのが上手い」など、個性があります。

 そのせいで、学習のスピードにも個人差があるように感じてしまうかもしれませんが、「あなた自身が英語を話せるようになるかどうか」とは無関係です。

 英語力は、継続的な練習によってのみ培われます。

 そのうえで大事なことは、英単語や英文法を単なる知識として学ぶのではなく、英語を話すための道具と捉えること。意識的にこの道具を使いこなす練習を繰り返しましょう。

ネイティブの先生が必要でしょうか?

――英会話を学ぶときには、ネイティブ・スピーカーがよいのでしょうか?

:ネイティブ・スピーカーがよいとは答えることができません。

 皆さんは日本語が堪能です。それは、日本語のネイティブ・スピーカーだからです。しかし、明日から外国人に日本語を教えてほしいと依頼されたら、引き受けるでしょうか。

 通常は、引き受けないと思います。それは、日本語のネイティブ・スピーカーであっても、日本語教師になれるとは限らないと知っているからです。しかも、日本語について、詳しく説明できる保証がないからです。

 それは、英語にも当てはまります。英語学習では、ネイティブ・スピーカー中心主義のようなものが存在します。しかし良い先生とは、あなたの英語力を伸ばす助けができる人のことです。発音や英文法をわかりやすく説明でき、教える対象となる学習者をよく理解していることが求められるのです。

 最後に、留学の効果については、前回の記事(「語学留学で英語力が伸びる人と全く伸びない人」決定的な4つの違い)でご説明していますので、そちらもぜひご覧ください。

参考文献:『英語学習 7つの誤解』(大津由紀雄、NHK出版)