10年連続で算数オリンピック入賞者を輩出している彦根市発の知る人ぞ知る塾「りんご塾」。天才を生み出すそのユニークな教育メソッドを、塾長の田邉亨氏が初公開した書籍『10年連続、算数オリンピック入賞者を出した塾長が教える 「算数力」は小3までに育てなさい』(ダイヤモンド社刊)が、このたび発売になった。本書を抜粋しながら、家庭にも取り入れられるそのノウハウを紹介する。
「小3までの算数は、椅子に座っていれば誰でもできる」は本当か?
子どもの早期教育で「計算」に注力する親はいても、「算数」に注力する親はあまりいません。なぜなら、小3までの算数はとても簡単だからです。
本書を読んでいるお母さんお父さんも、小3までの算数で苦労した記憶はほとんどないのではないでしょうか。
りんご塾に無料体験に来る親御さんの多くもそうです。
多いのは、旦那さんがお医者さんで、奥さんが専業主婦というケース。旦那さんは医学部に入っているくらいだから数学が得意。だから、こう言うのです。
「俺は小学校低学年のときに勉強した記憶なんてない。普通に学校に行って、椅子に座って、先生の言うことを聞いてたら全部100点だった。それなのに、なんで小1から塾に通わせないといけないんだ? 4年生からで十分だろう」
これは半分正解で、半分誤りです。
自分の頭で汗をかいて考えているか
たしかに、小3までの算数は簡単です。それは大人の思い込みではなく、子どもたちにとってもそう。むちゃくちゃ簡単。だって、「12÷2=6」とかですよ? 掛け算ができて、割り算を理解していたら反射神経で解けます。
特に、教育熱心なご家庭の場合は公文式や計算ドリルなどをやっている場合も多いので、低学年では学校の算数のテストはほぼ100点という子も少なくないでしょう。
ところが、実はあとで一番問題になるのは「算数なんて簡単だ」と思っている、算数が得意な子どもなのです。
そういう子は、4年生以降、思考力を問われる問題が出るようになったり、進学塾に通うようになったりした途端、算数が苦手になることがよくあります。
なぜなら、「自分の頭で汗をかいて考える」という練習ができていないから。
ここに、算数が得意だった子がいつの間にか苦手になる、大きな落とし穴があるのです。
算数は本来、試行錯誤して解くものです。ところが、小3までの算数は、先生の話を聞いていればすぐに理解できるものばかり。手順さえ覚えておけばできるから、テストのときも「あれをここに当てはめれば解ける」というような解き方をします。
だから、「算数は努力しなくてもできる」と勘違いする子が続出します。本当は努力して試行錯誤しないと解けないものなのに、そういう認識になっていないから、いざ思考力が求められるようになるとつまずいてしまうのです。
*本記事は、『10年連続、算数オリンピック入賞者を出した塾長が教える 「算数力」は小3までに育てなさい』(田邉亨著・ダイヤモンド社刊)から抜粋・編集したものです。