タイムパフォーマンスを考えイントロを省き、歌い出しからはじまる構成で「LOVE PHANTOM」がスタートしていたら、圧巻のステージは実現していなかったでしょう。長いイントロをしっかりと聴かせたことで、会場はもちろん、テレビやネットで観ている視聴者にもサプライズが起こっている空間のグルーヴを伝えることができたのです。
YOASOBI「アイドル」では
イントロを追加した事例も
紅白で圧巻のパフォーマンスをイントロから演出した、もう一つの例を紹介します。
それは、2023年に出場したYOASOBI「アイドル」のパフォーマンスです。
「アイドル」の披露は、日本のテレビ番組では紅白が初になると事前に発表されていました。
同じく紅白に出場した、アイドルやダンス&ボーカルグループとして活動する、あの(アーティスト名義はano)や、司会を務めた橋本環奈、櫻坂46、乃木坂46、JO1、Stray Kids、SEVENTEEN、NiziU、NewJeans、BE:FIRST、MISAMO、LE SSERAFIMのメンバーがダンスで登場する、スペシャルコラボステージとして披露。
この年の紅白で一番の盛り上がりをみせたといっても過言ではない、素晴らしいパフォーマンスでした。
「アイドル」のイントロ秒数は0秒。打ち込み打楽器の音が“ジャン”と入るのみで、すぐに歌が始まります。
しかし、紅白の本番ではその前に、崇高でドラマティックな讃美歌の合唱が響く、Aメロ前に登場するパート部分を15秒響かせ、その間に、ダンスパフォーマンスチームのアバンギャルディとREAL AKIBA BOYSが登場する演出が加わり、そこから圧巻のステージが展開していったのです。
YOASOBIは、紅白出場前の単独ライブで披露した「アイドル」でも、讃美歌の合唱で始まるパート部分を長く響かせ、そこから歌い始めるというスタイルで楽曲を盛り上げていました。
YOASOBIは“イントロが無い曲”をよく作ります。「アイドル」以前にも「夜に駆ける」や「群青」など、イントロがないヒットソングを生み出してきました。
イントロが無いとサブスクリプションサービスで曲が飛ばされにくくなり、その結果、再生回数が伸びるのです。これは令和のヒットソングに共通する大きな特徴でもあります。