【シンガポール】中国の人工知能(AI)企業が、性能の劣る半導体を使用しながらも米国のライバルにほぼ匹敵する成果を上げ、シリコンバレーを驚かせている。
中国企業ディープシーク(深度求索)のAIモデルは、ある有名なランキングで世界トップ10入りを果たした。この事実は、米国の輸出規制が中国の急速な進歩を阻止するのは難しいことを示している。
ディープシークは20日、複雑な問題解決に特化したモデル「R1」を発表した。
シリコンバレーのベンチャーキャピタリストで、ドナルド・トランプ米大統領に助言するマーク・アンドリーセン氏は24日、Xへの投稿で「ディープシークR1は、これまでに見た中で最も驚くべきブレークスルー(飛躍的な進歩)の一つだ」と述べた。
ディープシークの開発を主導したのは中国でヘッジファンドを運営する梁文峰氏。同国のAI推進の顔となっている同氏は20日、中国の首相と会談し、国内企業が米国との格差を縮める方法について議論した。
専門家によると、ディープシークの技術は米国のオープンAIやグーグルに及ばない。しかし、性能の劣る半導体を比較的少なく使用し、場合によっては米国の開発者が不可欠と考えていたステップを省略しているにもかかわらず、米企業にとって手ごわいライバルだという。
ディープシークによると、最新モデルの一つの学習コストは560万ドル(約8億7000万円)だった。この金額は、米AI開発企業アンスロピックのダリオ・アモデイ最高経営責任者(CEO)が昨年、モデル構築のコストとして挙げた1億~10億ドルを大幅に下回る。
サンフランシスコのAIハードウエア企業ポジトロンの共同創業者バレット・ウッドサイド氏は、自身と同僚の間ではディープシークの話題で持ちきりだと述べた。ディープシークのオープンソースモデル(AIモデルを支えるソフトウエアコードが無料で公開されている)について「非常にクールだ」と話した。
12月に公開されたディープシークの最新主力モデル「V3」は中国や習近平国家主席に関する微妙な政治的質問への回答を拒否することに、ユーザーは気付いている。場合によっては、オープンAIの「チャットGPT」のように政府批判の視点を含めるのではなく、中国政府の公式プロパガンダに沿った回答をする。