中国AI新興、米オープンAIを猛追中Photo:CFOTO/gettyimages

【シンガポール】最先端半導体の中国向け輸出が制限される中、同国の新興企業は業界の予想を上回るペースで米大手の人工知能(AI)モデルに追いつきつつあるかもしれない。

 中国ヘッジファンド運用大手が出資する新興企業ディープシークは11月、最新の大規模言語モデルのプレビュー版をリリースした。同社によると、このプログラムは米オープンAIが9月にプレビュー版を公開した推論モデル「o1」に匹敵する性能を持つ。

 他の中国企業からも同様の発表が相次いでいる。中国インターネットサービス大手のアリババとテンセントが出資する新興企業ムーンショットAIは、「o1」に近い性能を持つ、数学に特化したモデルを開発したと発表。アリババも、自社の試験的な研究モデルが数学で「o1」のプレビュー版を上回ったと述べた。

 各社はモデルに関する資料を公開していない。AIモデルの性能を測る統一基準はないため、各社の主張を評価するのは難しいものの、米国の一部専門家は感心したと話す。

 オープンAIの元フェローでAI起業家のアンドリュー・カー氏は、中国の「追い上げが加速している」と述べた。同氏によると、ディープシークはオープンAIの推論モデルの複製を試み、数カ月で方法を見つけ出した。「私の同僚の多くがこれに驚いた」

 比較に使用されるテストの一つが、成績優秀な高校生を対象とする米国選抜数学試験(AIME)だ。

 ディープシークは自社モデルがAIMEでオープンAIを上回ったと述べた。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が今年のAIMEの15問を使って実験したところ、オープンAIの「o1」のプレビュー版はディープシーク、ムーンショットAI、アリババの試験モデルより短時間で正答した。仮想の2人用対戦ゲームの戦略に関する言語問題では、オープンAIのプログラムが10秒で解答したのに対し、ディープシークは2分以上かかった。