一気に、90円割れ含みの円高・米ドル安となってきました。
このまま、円高・米ドル安が一段と進むのか、それとも、いったん円安・米ドル高へ戻すことになるのか? それを考える上で、米中関係の問題に、今回は注目してみました。
この数ヵ月にわたって、米中関係は、比較的良好な状態が続いてきました。そのきっかけは、6月のガイトナー米財務長官の訪中だったと思います。
実は、米国債と米ドルには、この前後まで根強い不安感が漂っていました。しかし、ガイトナー訪中を境にして、その不安感は沈静化していくところとなったのです。
6月までのマーケットにおける不安感の主役は、特に米国債に対するものでした。
5月下旬には、米国債格下げの思惑が広がりました。
その後、6月にかけては、IMF債が発行される見通しとなったことから、主要な米国債の買い手であった中国をはじめとするBRICs諸国が、IMF債購入のために、保有する米国債を売却する方針を発表したのです。
6月のガイトナー訪中の
意味が透けて見えた!?
米国債に対する不安感が高まる中で、米国債の価格は下落(利回りは上昇)に向かい、10年物の米国債利回りは4%突破含みの動きになったのです。
ところが、10年物の米国債利回りは、ガイトナーが訪中した6月初めでピークアウトし、下落に転じました(価格は上昇)。
米国の10年国債の利回り |
これを見るかぎり、ガイトナー訪中に前後して、米国債への不安が後退に転じたことは明らかです。
米国債投資をめぐり、中国と米国との間で何らかの「密約」があったかどうかはわかりませんが、少なくとも、ガイトナー長官が6月初めのタイミングに訪中を選んだ意味は透けて見える気がするし、それは一定の成果を上げたと言えそうです。
ところが、先週末、米中間の良好な関係に変化をもたらしかねない出来事が起こりました。米国政府が9月11日、中国製自動車タイヤへのセーフガード(緊急輸入制限)を決めたのです。
これが米中関係を悪化させ、中国が米国債投資を中止し、米国債下落の不安が広がって、ひいては、米ドル下落の不安をもたらすという懸念はないのでしょうか?