

しかし、ユーザー企業はバカではない。
大きな契約をとって、レガシーな(巨大な)システムを売るという従来のベンダーのやり方に問題を感じ、エンタープライズ分野での革新に期待して、スタートアップに注目しているのだ。
顧客はレガシーでの苦い経験から、より気軽に使えるソリューションや、テクノロジーの革新を求めている――。ヒューレット・パッカードのAutonomyの買収は、従来型のモデルからの進化を探った末に大型投資に動いたのであろう(焦ったためか、拙速で不正会計を見抜けず約半額を減損処理した)。
そして、Facebook株がIPO価格を割り込む一方で、IPOを大成功させたWorkday。同社は、2005年にOracleが人事系に強いERPソフトウェアのPeopleSoftを敵対的買収したことに伴い、同社を去ったデイブ・ダフィールド(Dave Duffiled)氏とアニール・ブースリ(Aneel Bhusri)氏が創業したスタートアップだ。PeopleSoftのクラウド版ということで注目され、2億5000万ドルを集めた。
Workdayのサービスはユーザー毎のライセンスで小さく始められ、アップグレードや拡張も平易で、その上、システム運用も同社にお任せ。クラウドによるSaaSの利点を生かし、PeopleSoftの顧客をかっさらって成功している。
このように、エンタープライズ市場は転換期を迎えている。ニーズをとらえ、クラウドを使ったモデルの革新や新たな技術イノベーションができれば、大きなビジネスチャンスがある市場であると言えよう。
なお、WorkdayとAutonomyは例外ではない。この1年でブロックバスターIPO(数千億円級の大型IPOを成功させた)を果たしたベンチャーからいくつか紹介しよう。
事例1:Splunk(時価総額46億ドル)
Splunkは、注目を浴びるビッグデータにおけるリーダー企業の一つとなっている、さまざまなシステムから生成されるマシンデータの収集、検索、分析を行うために開発された「ITシステムのためのデータ分析プラットフォーム」をウェブベースで提供している。データログの解析に役立ち、セキュリティ違反を見つけやすくなる。
事例2:Palo Alto Networks(時価総額36億2000万ドル)
Palo Alto Networksは、アプリケーションやユーザーごとに通信の可視化やアクセス制御を行い、セキュリティリスクを回避する次世代ファイアウォールを開発した。従来のソリューションは向かってくる脅威を一律にブロックするのが主だが、これは不便を生じ仕事の生産性を下げる可能性がある。しかし、例えばFacebookへの社内からのアクセスが問題になることが多いが、マーケティング部門まで遮断するわけにもいかない。こうしたニーズに対応し、柔軟にセキュリティを実現する技術を提供している。