米航空宇宙局(NASA)の科学者チームは昨年の春、北極圏上空を飛行中に珍しいものを探知した。彼らはグリーンランド北部で新型レーダーシステムの試験を行っていた。レーダーの映像から、氷床の奥深くにトンネル網でつながった集落の一群が存在しているのが分かった。まるで過去の文明が凍結されたようだった。「どこか別の惑星の上空にいる気がした。人間や何かがそこで生き延びられるとは思えなかった」。NASAの科学者チャド・グリーン氏は語る。彼らがスクリーン上で見たのは失われた文明ではなく、冷戦時代に氷の下に建設された米軍基地の残骸だった。この基地は、秘密裏に進められた米国防総省の「プロジェクト・アイスワーム」の一部だった。北極圏の氷の下に核ミサイル発射基地のネットワークを建設するというものだ。中距離弾道ミサイル600発を格納するよう設計されたこの地下施設は、半世紀以上も前にさかのぼる米国のグリーンランドへの関与の実態を明らかにしている。