「構想力・イノベーション講座」(運営Aoba-BBT)の人気講師で、シンガポールを拠点に活躍する戦略コンサルタント坂田幸樹氏の最新刊『戦略のデザイン ゼロから「勝ち筋」を導き出す10の問い』(ダイヤモンド社)は、新規事業の立案や自社の課題解決に役立つ戦略の立て方をわかりやすく解説する入門書。戦略とは何か。変化の時代に、企業は何を問い直すべきなのか。本連載では、さまざまな経営や組織の悩みについて坂田氏に話を聞きながら、同書の考え方を現在進行形の課題へと結びつけていく。
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決定的な違いは「仕事の分解」にある
――「人生がうまくいくビジネスパーソン」と「いつも忙しいだけの人」の違いは、どこにあるのでしょうか?
一番大きいのは、仕事をタスクに分解できているかどうかです。
仕事ができる人は、やるべきことを細かい単位に分解し、それぞれに必要な時間を割り当て、優先順位を整理しながらカレンダーに落とし込んでいます。
一方、いつも忙しいだけの人は、出社してパソコンを立ち上げたら、とりあえずメールを開き、返信を始めます。
試しに、部下に「今何をやっているの?」と聞いてみてください。
「発表資料を作っています」「調査を進めています」といった大きな塊でしか答えられない人は、要注意です。本当に仕事ができる人は、もっと細かい単位で仕事を把握しています。
――「仕事を分解する」とは、具体的にはどういうことでしょうか?
ポイントは、できるだけ細かい工程まで落とし込むことです。
たとえば「社長向け報告資料を作る」という仕事があったとします。これをその言葉のまま抱えていると、何から着手すべきかが曖昧なまま時間だけが過ぎていきます。
しかし実際には、「目的を確認する」「アウトラインを作る」「不足情報を整理する」「情報を収集する」「情報を加工する」「スライドに落とし込む」「内容を精査する」などの複数の工程に分けることができます。
このように分解すると、初めて「何を」「どの順番で」「どのくらいの時間をかけて」進めるべきかが見えてきます。
なぜ「いつも忙しいだけの人」は分解できないのか?
――では、なぜ「忙しいだけの人」はタスクを分解できないのでしょうか?
最大の問題は、仕事を整理する時間を取っていないことです。出社したら、そのままメールを返し始める。Slackを見て、その場で反応する。こうした“反応型”の働き方になってしまっています。
本来は、始業前や始業直後に、「今日は何をやるのか」を整理する時間を持つべきです。メール返信一つでも、「何通あり、1通あたり何分かかるのか」をタスクとして把握しなければなりません。
この時間を毎日確保し、タスクを細かく分解してカレンダーに落とし込む。このルーティンを習慣化することが、忙しいだけの人から抜け出す第一歩です。
『戦略のデザイン』とのつながり
――こうした考え方は『戦略のデザイン』とどのようにつながるのでしょうか?
本書でも、考え方の根底は同じです。どれだけ大きな戦略を描いても、それを実行可能な単位まで分解できなければ、戦略は実行されません。
重要なのは、大きなビジョンを持つことと、それを具体的な行動まで落とし込むことを両立させることです。つまり、「大きく描いて、小さく動く」。この考え方は、戦略にも日々の仕事にも共通しています。
――最後に、「忙しいのに成果が出ない」と感じている人へ、今日からできるアドバイスをお願いします。
毎朝1時間、タスクを分解する時間を作ってみてください。そして、それを必ずカレンダーに落とし込むところまでやってください。
一日にこなせるタスクは、実はそれほど多くはありません。だからこそ、仕事を分解し、優先順位を整理し、順番に進めていくことが重要です。
そうすることで、忙しいだけの状態から抜け出し、本当に重要な仕事に集中できるようになります。仕事の質も、一日の質も、大きく変わってくるはずです。
――ありがとうございました。
IGPIグループ共同経営者、IGPIシンガポール取締役CEO、JBIC IG Partners取締役。早稲田大学政治経済学部卒、IEビジネススクール経営学修士(MBA)。ITストラテジスト。
大学卒業後、キャップジェミニ・アーンスト・アンド・ヤング(現フォーティエンスコンサルティング)に入社。日本コカ・コーラを経て、創業期のリヴァンプ入社。アパレル企業、ファストフードチェーン、システム会社などへのハンズオン支援(事業計画立案・実行、M&A、資金調達など)に従事。
その後、支援先のシステム会社にリヴァンプから転籍して代表取締役に就任。
退任後、経営共創基盤(IGPI)に入社。2013年にIGPIシンガポールを立ち上げるためシンガポールに拠点を移す。現在は3拠点、8国籍のチームで日本企業や現地企業、政府機関向けのプロジェクトに従事。
単著に『戦略のデザイン ゼロから「勝ち筋」を導き出す10の問い』『超速で成果を出す アジャイル仕事術』、共著に『構想力が劇的に高まる アーキテクト思考』(共にダイヤモンド社)がある。




