「AIがすごいのはわかる。でも、実際の仕事では使えないよね――」。そう語る人は少なくない。AIを活用するどころか、“トレンド”として消費しているだけの人も多い。その一方で、「AIを使いこなす人」と「使えない人」の間で、能力や効率の差は見えないところでどんどん広がっている…。
この現実を、すでにAIを使いこなしている人たちはどう見ているのか。AIを「思考や発想」に活用するための書籍『AIを使って考えるための全技術』の発売を記念して、元起業家で、現在は大手ITベンチャー企業で生成AIの社内推進を担っているハヤカワ五味さんに話を聞いた（ダイヤモンド社書籍編集局）。
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AIを「使える人」を頼ることは、自分の首を絞めること
――「AIを使えないとまずい」という業種や職種はありますか？
ちょっと過激な言い方になりますけど、基本的にリモートワークで働いている人は全員危機感を持ったほうがいいと思っています。
ハヤカワ五味（はやかわ・ごみ）2015年頭に株式会社ウツワを創業後、ランジェリーブランド『feast』、フェムテック事業『ILLUMINATE』など、多数の事業を展開。2022年3月にはユーグレナグループに参画し、はたらく女性向けの新規事業開発に取り組む。24年4月に退職後、2024年7月に大手ITベンチャーにジョインし、生成AI利用の社内推進に尽力している。生成AIの利活用に関してSNSでも積極的に発信している。
リモートでできる仕事って、言い換えればデジタル化や生成AI導入しやすい仕事であり、つまり、生成AIに置き換えるハードルが物理を伴うものよりも低いと思っています。だからこそ、物理を伴うものと比べて、早めに今後のキャリアを検討する必要があると思っています。ただ、すぐにすべてが代替されますよという話ではなく、危機感を持って今後のプランを考えたほうがいいということですね。
また、よく「この業務を生成AIでもっとうまくやれませんか？」と聞かれるんですけど、それって私が解決できる内容なら、もう私がやったほうがいいって話になっちゃいますよね。極端なことを言えば、生成AIに詳しい人があなたの仕事を代替できるなら、あなたの存在意義はなくなるということです。
逆に言えば、多くの仕事は、生成AIについて詳しくてもすぐに代替できないようなものだと思っていて、それにぜひ気付いていただきたいですね。
AIに「任せる」のではなく、AIを「使える」人になろう
だからこそ私は現場の人たちに「生成AIを使える人に頼るんじゃなくて、自分で考えてみてください」と言いたい。
「AIを活用して3人分の仕事を1人ですれば、年収3倍になります」とか言われたら、みんな喜んでやりますよね。私なら全然やります（笑）。
そういう意味では、みんなが本気を出してAIを使い始めたら、きっといろんな意味で既存の構造が崩れると思います。
自分の仕事がAIで代替可能だという自覚が少しでもある人は、自分でAIを触って、自分なりの使い方を見つけていかないと将来的に詰みかねないと思います。
おそらく誰もが「他人には再現できない知識や経験」って持っていると思うんです。それはきっと現場にあるし、本人しかわからない。
だからこそ、AIに任せるのではなく、AIと協働するという感覚が求められます。生成AIが得意なことに、自分の専門知識や現場感覚を加えることで、唯一無二の存在になれるはずです。
“いいアウトプット”を出すには、“いい”の定義が必要
ただ、難しいのは「何をもってクオリティが高いのか」を利用者自身が理解していないと、生成AIを使ってもそこに到達できないということです。
よく「生成AIにもっといいアウトプットを出してほしい」と言われるんですけど、「その“いい”って、たとえば何ですか？」と聞くと答えられない人が多い。
まれに奇跡的に本人の能力を超えたアウトプットが出ることもありますが、利用者にそのアウトプットする審美眼が備わってなければ、その価値に気づけません。
だからなおさら、AIや「AIを使える人」に丸投げするんじゃなくて、AIを使いながら自分の頭も働かせて理想のゴールを見つけていくことが大事なんです。
そういう意味では、今回出版された『AIを使って考えるための全技術』のように、プロの視点で設計されたプロンプト集は、最初の一歩を踏み出せない人の役に立つと思います。
私は「悩むより触ってみたら？」と思うんですが、「おすすめの本はありますか？」と聞かれることって本当に多いんです。納得してからじゃないと動けないという人が多いんでしょうね。
目的や理想がまだ曖昧でも、「その答え自体をAIを使って探していきたい」という人にとっては、こういった本が“AIとの対話”を始めるきっかけになったらいいですね。
（本稿は、書籍『AIを使って考えるための全技術』に関連したインタビュー記事です。書籍では、AIを使って問題解決するための56の方法を紹介しています）
■ダイヤモンド社の新刊
「最初の一歩を踏み出せない人には、この本が“AIとの対話”を始めるきっかけになると思います」
――ハヤカワ五味――
「思考や発想の技術を紹介した『考具』って本がめっちゃ好きなんですけど、まさにそれのAI版ですね。これも買います」
――けんすう（古川健介）――
発売５日で大重版!! 売れてます!!
分析、発想、発展、具体化、検証、予測……
「深く考える」ためのAIの使い方!!
『AIを使って考えるための全技術 ―「最高の発想」を一瞬で生み出す56の技法』石井力重（著）、加藤昌治（監修）、682ページ
『AIを使って考えるための全技術』とは？
AIを、仕事の効率化や自動化に使うだけではもったいない。
頭のいい人は、AIを使って「能力以上の答え」を手に入れています。
「斬新な発想がほしい」
「ひと言のアイデアを膨らませたい」
「思考の弱点が知りたい」
「ビジネスの売上を予測したい」
「前例のない課題を解決したい」
「難易度の高い悩みを解決したい」
「ユーザーの本音を知りたい」
…などなど。
仕事も、日常も。あらゆる「考えること」に役立つAIの使い方を56個紹介。
この本が、あなたの人生から
「悩む時間」を消し去ります!!
本書の目次
序章 「AIを使って考える」とは？ ―チュートリアル
1部 すぐにアイデアがほしいとき
第1章 「AI特有の力」で考える
第2章 「自由な発想」で考える
第3章 「ロジカルな発想」で考える
2部 アイデアを磨きたいとき
第4章 考えを「発展」させる
第5章 考えを「具体的」にする
第6章 考えを「検証」する
3部 アイデアを実現したいとき
第7章 アイデアの「伝え方」を考える
第8章 アイデアの「実行策」を考える
4部 考えるヒントがほしいとき
第9章 「課題」を分析してヒントを得る
第10章 「悩み」を分析してヒントを得る
第11章 「人」を分析してヒントを得る
第12章 「未来」を予測してヒントを得る
最終章 「技法」を使いこなす ―ケーススタディ
