比較対象が価値を決める「参照点の法則」

不思議なことに、人は商品の価値を絶対的な基準で判断しているわけではありません。

多くの場合、最初に提示された情報や、隣に並んでいる商品を「参照点(さんしょうてん)」、つまり無意識の“ものさし”として、目の前の商品の価値を判断します。

例えば、あなたが素晴らしいデザインのオリジナルTシャツを5000円で販売していたとします。

お客様の中には「Tシャツに5000円は少し高いな」と感じる方がいるかもしれません。しかし、もしそのTシャツの隣に、こだわりの素材と製法で作られた「プレミアム版Tシャツ 1万2000円」が並んでいたらどうでしょうか。

「納得できる理由」を
お店側がそっと提示

多くのお客様は、1万2000円という価格を“ものさし”として、「それに比べれば、この5000円のデザインTシャツは、品質も良さそうだし、むしろお買い得かもしれない」と感じ始めます。

これは、お客様が安心してお金を使うための「納得できる理由」を、お店側がそっと提示してあげているのと同じことです。

価格の異なる複数の選択肢を用意することで、お客様は自分自身で比較検討し、その商品の価値を判断しやすくなります。お客様が「良い買い物ができた」と感じる体験は、お店への信頼感を育み、次の購買へと繋がる大切な一歩となるのです。

「自分ごと」化がロイヤリティを育む

「損失回避の法則」を応用した「限定オファー」は、単に売上を伸ばすだけのテクニックではありません。その真価は、お客様との特別な関係性を築き、長期的なファン(リピーター)を育てる点にあります。

「会員様限定」「いつもご利用いただいている皆様へ」といった言葉を添えて特別な案内をすることで、お客様は「自分はその他大勢の中の一人ではなく、このお店にとって特別な存在なのだ」と感じることができます

この「自分ごと」として捉えてもらう体験こそが、お客様の心にお店への愛着を芽生えさせるのです。

“顧客ロイヤリティ”を強力に育んでいく

人は誰でも、自分が大切にされていると感じれば、その相手に応えたいと思うもの。

限定セールへの招待や、先行予約の権利といった「特別な扱い」は、「このお店をこれからも応援し続けたい」「次の案内も見逃さないようにしよう」というポジティブな感情、すなわち“顧客ロイヤリティ”を強力に育んでいきます。

目先の売上だけを追うのではなく、こうした心理的なアプローチを通じて、お客様一人ひとりとの絆を深めていく

それこそが、数あるショップの中からあなたのお店が選ばれ続けるための、最も確かな戦略といえるでしょう。

※本稿は、『「おウチ起業」で4畳半から7億円 ネットショップで「好き」を売ってお金を稼ぐ!』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。