中国がドル箱から実験場に 欧米企業の今Photo:Bloomberg/gettyimages

【上海】中国で事業を展開する欧米企業が新たな現実に直面している。簡単に稼げる時代は終わり、競争が激化の一途をたどっているのだ。

 中国ではここ数年、経済成長が鈍化し、消費者は選別姿勢を強めている。一方、手ごわい国内勢の台頭によってライバルが増え、激しい価格競争が起きた結果、企業の利益率は低下している。

 国際ブランドはより現実的になっている。その戦略は企業や業界によって異なるが、中国の嗜好(しこう)に合わせた製品開発、開発ペースの迅速化、マーケティング手法の差別化、価格引き下げなどが挙げられる。

 多くの企業は、14億人の人口を抱え世界第2位の消費者市場である中国を無視するわけにはいかない。そして、中国での販売が低迷したままであっても、一部の企業は、学びの場となる重要なイノベーション拠点として中国に注目している。

 上海のマーケティング会社「Wai Social」の創設者オリビア・プロトニック氏は、以前は中国進出に関心を持つ米国企業からの問い合わせを受けていたと話す。新型コロナウイルス禍以降、問い合わせ件数は4分の1ほどまで落ち込んだという。だが現在は、中国に進出してからしばらくたつが戦略の見直しが必要だと気付いた外国ブランドが顧客の大半を占める。

「外国ブランドにとって、かなり厳しい情勢となっている」とプロトニック氏は言う。

リスクの高いビジネス

 経済が急速に拡大し、数百万人が中間層や富裕層に加わった中国は長年、「ルイ・ヴィトン」を傘下に持つ LVMH 、 スターバックス 、 ナイキ 、 アップル 、 テスラ などの企業にとって「金のなる木」だった。これらの企業は中国ブランドと競合することがほとんどなかった。

 中国では今や、国内勢が多くの業界で欧米ブランドを追い抜いている。スターバックスは最近、中国事業の過半数株式を中国のプライベートエクイティ(PE)投資会社、博裕資本に売却すると発表した。スターバックスは、瑞幸咖啡(ラッキンコーヒー)などの安価な地場企業に中国での市場シェアを奪われている。ラッキンは2023年、売上高と店舗数で中国最大のコーヒーチェーンとしての座をスターバックスから奪った。