歌手の浜崎あゆみさん Photo:JIJI
日中関係の緊張が高まるなか、公演中止を受けた浜崎あゆみが無観客の会場でステージを完遂した行動に称賛が集まった。政治的発言を避けつつアーティストとしての矜持を示した姿勢は、「ステージの神聖性」とは何かを改めて問う出来事となったようだ。(フリーライター 武藤弘樹)
無観客の会場で
アンコールまでフルに歌い切る
歌手の浜崎あゆみが予定していた上海のライブは、中国当局より急遽中止の要請を受けた。
公演前日の出来事であり、ステージは組みあがって準備万端であった。浜崎あゆみはまずは状況の説明と公演が行えないことについての詫びを戸惑いを交えて発信していたが、翌日、つまり公演当日、1万4000人が入る予定だった無観客の会場でセットリストをアンコールまでフルで歌い切ったそうである。
これに「かっこいい」「ロックだ」と称賛が集まった。
公演中止要請の背景は説明されていないが、言うまでもなく日中関係の緊張の高まりに起因するものであろう。高市首相の台湾有事を存立危機事態とみなす発言をきっかけに、中国は対日姿勢を強めていて、その影響は各方面に及んでいる。
エンタメ関連では日本人アーティストの中国公演の中止が相次いでいて、香港、上海、台北の3箇所をツアーでまわる予定だったゆずも「やむを得ない諸事情により」と全公演を中止している。
高市首相の「存立危機事態発言」は周知の通り議論を呼んでいて、国内では支持する声が多いが反対の声も充実していて、真っ向から対立していた。
そんなピリピリしたムードの中、自ら「政治には首を突っ込まない」的なことを明言した浜崎あゆみが、政治の影響で公演が中止になろうともステージをまっとうしたというニュースは、明るい話題とまでは言わないが、逆境への向き合い方の可能性を示す一つの興味深い訓話として、政治的な対立を超えて多くの人を感心させたようである。







