強固な解雇規制を背景に、日本の大手企業を中心に数十年間維持されてきた終身雇用制度。人事コンサルタントの城繁幸氏は、終身雇用が高度経済成長期の日本が欧米先進国へ急速に追いつくために一定の意義があったと認めながらも、同時に今の日本に大きく「3つの歪み」をもたらしたと語る。さらに、その歪みの解消には、解雇規制を緩和する必要があると説く。(本アジェンダの論点整理については第1回の編集部まとめを参照)

じょう・しげゆき
人事コンサルティング「株式会社Joe's Labo」代表。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種経済誌やメディアで発信し続けている。06年に出版した『若者はなぜ3年で辞めるのか?』は2、30代ビジネスパーソンの強い支持を受け、40万部を超えるベストセラーに。08年発売の続編『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』も15万部を越えるヒット。08年より若者マニフェスト策定委員会メンバー。
ブログ:Joe's Labo
Photo by Toshiaki Usami

「終身雇用は長い日本の歴史の中で培われた雇用慣習であり、日本人にもっとも合ってるんですよ」

 以前、筆者が解雇規制緩和の重要性についてある勉強会で述べた際、某大学教授から真顔で言われたセリフである。ひょっとすると、同じように考えている読者も多いかもしれない。

 だが、それは大きな間違いだ。1ヵ月分の解雇予告手当を支払えばいつでも使用者側から解雇できると労基法に示されているように、元々は終身雇用などというものは日本に存在しなかった。その流れが変わったのは高度成長期で、経営側が高いハードルをクリアしなければ解雇は認めないという旨の判例が積み上げられることで、事実上、企業は正社員を解雇することが困難となった。「少し我慢すればすぐに景気が良くなるのだから、企業は我慢して面倒見てやれ」という高度成長期の空気により、後付けで終身雇用契約が生み出されたことになる。

 要するに、終身雇用などというものは日本の文化でもなんでもなく、ここ数十年の流行りものにすぎないということだ。

 とはいえ、実際、日本が欧米先進国に急速にキャッチアップした高度成長期においては、終身雇用制度はそれなりの意義があったのも事実だ。労働者の流動性を抑えることで、企業は自社に特化した形で、高いレベルでの技能の蓄積が可能となった。これは特に製造業において大きなメリットをもたらした。

 だが、同時にそれは、日本社会に今も色濃く残るいくつもの歪みももたらした。詳細は拙著『7割は課長にさえなれません』をご覧いただきたいが、ここではそのいくつかを紹介しよう。