「……あるかもしれないだろ」――説得力がないと自覚しながらも、意地を張り、後には引けない夫。この姿は、含み損を抱えながら「奇跡的に反発するかも」と根拠なき希望にすがる投資家そのものです。客観的な確率を無視した現実逃避は、相場でも家庭でも致命傷を招くだけ。自らの間違いを素直に認め、傷口を広げずに撤退する「負けを認める勇気」という、資産を守るための鉄則に迫ります!
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「もしかしたら上がるかも…」
投資家の目を狂わせる“根拠なき希望”の代償
株式投資において、含み損を抱えた時に「ここから奇跡的に反発するかもしれない」と、根拠のない希望にすがってしまった経験はないでしょうか?
自分の判断が間違っていたと認めるのは、誰にとっても苦しいものです。夫婦間の口論が泥沼化していく以下のシーンは、自らの間違いを認められず、意地を張って傷口を広げてしまう投資家の心理を痛いほどリアルに描いています。
「じゃあ聞くけど、40歳で、14年もブランクのある子持ちの主婦を、いきなり正社員で雇ってくれる会社がどれだけあるって思ってるの?」
――『89歳、現役トレーダー 大富豪シゲルさんの教え』より
客観的な「確率」を無視した暴論
妻に「投資をする余裕はない」と正論で追い詰められた夫は、苦し紛れに「君が正社員になればいい」と責任を押し付けます。しかし妻から「14年のブランクがある40歳の主婦が正社員になれる確率がどれだけあるのか」と、極めてシビアで現実的な反論を突きつけられます。
投資の世界でも、これと同じことが起こります。業績が右肩下がりで株価チャートも崩壊している銘柄を抱えたとき、客観的なデータ(現実)を見れば「さらに下落する確率」のほうが圧倒的に高いにもかかわらず、「画期的な新製品が発表されるかもしれない」「大口投資家が買ってくれるかもしれない」と、極めて確率の低いシナリオにすがりついてしまうのです。
その言葉に、説得力がないことを自覚していた。けれど、もう後には引けなかった。2人の間に横たわる溝は、思っていたよりも深かった。
――『89歳、現役トレーダー 大富豪シゲルさんの教え』より
「後に引けない」意地が致命傷を生む
「あるかもしれないだろ」という夫の反論は、まさに投資家が陥る希望的観測の極みです。恐ろしいのは、夫自身も「自分の言葉に説得力がない(=その確率は極めて低い)」と内心では自覚している点です。
頭では分かっているのに、引っ込みがつかなくなり、意地を張ってポジション(自分の主張)を維持してしまう。これは、損切りができずに“塩漬け株”を作ってしまう投資家の典型的な心理状態です。
相場において、「後に引けない」という個人のプライドや意地は、資産を減らす最大の要因となります。客観的な状況が悪化しているのに「もしかしたら」という根拠のない希望でポジションを持ち続けるのは、投資ではなくただの現実逃避です。
自分の見立てが間違っていたと気づいた時点で、素直に非を認めて即座に撤退(損切り)する。この「負けを認める勇気」を持つことが、相場という厳しい現実の世界で大切な資産を守り抜くための、重要なノウハウと言えるでしょう。
※本稿は、『89歳、現役トレーダー 大富豪シゲルさんの教え』(ダイヤモンド社)をもとに編集したものです。



