マスク氏「兆万長者」への道、熱狂的ファンが導くか

 フィンテック起業家であるディーン・ヌーリー氏(41)は、史上最大のIPO(新規株式公開)に参加したいと考えている。米実業家のイーロン・マスク氏はそれを当てにしている。

 ヌーリー氏は、マスク氏の動画やポッドキャストのインタビューを何年も聴いてきた。自身の純資産の約85%を電気自動車(EV)大手テスラの株式が占めており、マスク氏率いる宇宙開発企業スペースXの株式が上場されれば、購入する予定だという。「迷う理由などない」

 ヌーリー氏は自身がマスク氏の熱狂的なファンだとは思っていない。ただ、超人的な人工知能(AI)に支えられ、人類は将来的に多惑星種になるという同氏のビジョンを信じているだけだと話す。「イーロン・マスク氏が舵(かじ)を取っている。この産業の可能性は無限大だ」

 スペースXは12日の上場を予定している。750億ドル(約12兆円)近くを調達する計画で、マスク氏は世界初の兆万長者(トリリオネア)になる可能性がある。

 このIPOはウォール街の「個人投資家革命」にとっても歴史的な瞬間となるだろう。

 ここ数年、個人投資家は結集して市場を動かしてきた。ヘッジファンドの賭けを覆したり、経営難の企業を救済したり、お気に入りの株式の価格を急騰させたりした。シタデル・セキュリティーズによると、個人投資家による株式・オプション取引の合計売買高は5月に過去最高を更新した。

 その影響力は拡大しており、マスク氏はそれを活用する方法を誰よりもよく知っている。テスラの株主に個人投資家が占める割合は約3分の1だ。テスラの米国での自動車販売台数は12位に過ぎないが、時価総額は自動車メーカーの中で1位で、2位以下の30社の合計額を上回る。それを支えているのは個人投資家の信頼と熱意だ。

 マスク氏はそれに報いると約束している。同氏は2020年、「私は小口の個人投資家の大ファンだ」とツイート(現X)に投稿し、スペースXまたはスターリンク事業を上場する可能性に触れた。「必ず最優先にする。約束する」

 マスク氏はIPOで売り出すスペースX株のうち、約20%かそれ以上を個人投資家向けに確保する見通しだ。通常は5~7%のため、異例の大きさと言える。それでも需要が大きく上回る見通しだ。公開価格135ドルに基づく時価総額が約1兆7700億ドルに達する同社は(これまで非上場であったため)ほとんどの個人投資家にとって事実上、手の届かない存在だった。個人投資家を対象とする証券会社は、圧倒的な数の申し込みを見込んでいる。