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米宇宙開発企業 スペースXの新規株式公開(IPO)目論見書 には、他社のIPO案件であれば頓挫してしまったであろうほど、あまりにも多くの危険信号があふれている。
だが、ここでは重力の法則(常識)は働かない。その一因には、イーロン・マスク氏が、個人投資家の熱心な支援を得て、何年もかけて自身の企業帝国を築き上げてきたことがある。同氏は高揚感や熱狂、より良い未来への期待に動かされるソーシャルメディアの集団心理を巧みに利用している。今では彼自身、そうした期待への売り込みに長けている。
マスク氏のセールストークが信頼性を獲得しているのは、自身が最高経営責任者(CEO)も務めるテスラの成功や、宇宙産業を再定義し、今や世界最大の衛星打ち上げ企業となったスペースXの実績によるものだ。同社売上高の大きな柱であるスターリンク事業は、インターネット接続を世界規模で拡大し、マスク氏の地政学的影響力を高めると同時に、彼を世界一の富豪に押し上げるのに寄与した。
そして史上最大のIPOになる公算が大きい今回の上場でも、マスク氏は再び希望のメッセージに力を入れている。
「われわれの使命は、人間が複数の惑星で生きられるようにするのに必要なシステムや技術の構築であり、宇宙の真の姿を理解することであり、意識の光を星々へと広げることだ」。スペースXは先週公開したIPO目論見書の中でこう述べた。
「意識の光」という言葉は、目論見書の全体を通して10回ほど言及された。火星での生活について描かれた予想図はさながら、アップルTVのSFドラマ「フォー・オール・マンカインド」の現シーズンの一場面のようだった。さらにこの濃密な書類には、スペースXの獲得可能な最大市場規模を28兆5000億ドル(約4500兆円)とする、この世のものとは思えないような見積もりが含まれていた。これは、米国の国内総生産(GDP)全体にわずか数兆ドル及ばない規模だ。







