言葉を重ねるほど誤解される人と、無口でも信頼される人。その差は一体どこにあるのか?
本記事では、山口周氏に「決して寝る前に読み始めないこと。一度ページをめくってしまうと止めるのは不可能です。」と絶賛され、日経新聞、週刊現代などの書評で話題となっている『極限の漂流118日間』をもとに、「言葉を重ねるほど誤解される人の特徴」についてライター照宮氏が寄稿する。(構成/ダイヤモンド社・寺田庸二)

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「フリーランス」と「フリーター」の区別ができない母

 私は仕事を辞めたあと、しばらくしてフリーランスとして独立した。
 会社に勤めずに、自分で仕事を受けているが、それを親に話すと、
 なぜか何度も「フリーター」と受け取られた。

「“フリーランス”と“フリーター”は違う」

 そう言い直しても、次に話すときにはまた「フリーター」に戻っている。
 地元では、そんな働き方をしている人はまだ珍しかったので、
 仕方のないことかもしれない。

 ある日、また同じやり取りになったとき、
 もう面倒くさくなって訂正するのをやめた。

言葉を重ねるほど誤解される人の特徴

 太平洋でヨットを失い、118日間を救命ラフトで生き延びた夫妻の実話『極限の漂流118日間』(ソフィー・エルムハースト著/村井章子訳)には、救助後の記者会見で、夫のモーリスが強烈な違和感を覚えるシーンがある。

「あなた方の船を攻撃したのでしょう? だったら殺人クジラですよ!」と一人が決めつけた。一事が万事、こんな調子である。
「彼らの名詞の使い方は正しくない」と言葉の選択にうるさいモーリスは書いている。

――『極限の漂流118日間』より

 モーリスは、船に何が起きたのかを正確に伝えようとしていた。
 だが、記者たちはその説明を聞きながら、自分たちにわかりやすい筋書きへ寄せていく。モーリスは、ふたりが経験したことが聞き手の中で別の出来事として固まり始めていることに強い違和感を覚えていた。

 モーリスが言葉を尽くせば尽くすほど、彼の話は彼自身の手を離れていった。
 正確さは、伝わることの保証にはならない。
 そこに、正しさだけでは超えられない壁があった。

言葉を重ねても届かないときは?

 きちんと説明しているのに相手に伝わらないとき、つい言葉を足したくなる。
 もっと詳しく話せば、今度こそわかってもらえると思うだろう。
 だが、相手が最初から別の話としてとらえているなら、言葉を重ねるほど誤解は深まっていく。

 大事なのは、より細かく話すことではなく、相手が貼った最初のラベルを外すことかもしれない。
 夫モーリスと妻マラリンには救助後も、自分たちに起きたことがどう受け取られるのかという問題が残っていた。