生成AI関連で注目を集めるキオクシアHDホールディングス。AI向けデータセンター需要の拡大もあり、業績が大きく伸びていることはニュースからも想像に難くありません。では、その急成長によって会社のBSはどう変わったのでしょうか? 今回は書籍『サンキー図で「お金の流れ」が1秒でわかる 見るだけ決算書』2025年3月期と2026年3月期のPL・BSサンキー図を並べ、1年間の「稼ぎ」がBSの形にどう影響を与えたのかを見ていきます。
売上37%増、営業利益は約2倍
日本会計基準採用企業との比較を容易にするために、営業利益を「売上収益-売上原価-販管費」で算出し、IFRS上の「その他の収益・その他の費用」は除外しています。
まずPLから見ていきましょう。
キオクシアのPLサンキー図|上:2025年3月期、下:2026年3月期
売上収益は1兆7,065億円から2兆3,376億円へ37%増加。営業利益は4,416億円から8,663億円へ約2倍になりました。
キオクシアは大幅な増収増益について、生成AI用途を中心としたデータセンター向け需要を背景に、製造している半導体メモリの平均販売単価が大幅に上昇したことや、出荷量が増えたことを主な理由に挙げています。
では、この1年間に稼いだ利益は、2026年3月末のBSにどう表れたのでしょうか?
BSには「PL」の変化が反映されている
先に、BSとPLの関係について補足です。2025年3月31日のBSを出発点として、その後1年間の売上・費用・利益の動きを表すのが2026年3月期のPL(先ほど登場した下側のPLサンキー図です)。そして、その1年間の活動による変化が反映されたものが、2026年3月末のBSになります。
出典:『見るだけ決算書』P.036
つまり、時間の流れは「2025年3月末BS → 2026年3月期PL → 2026年3月末BS」です。ここからは、好調だった2026年3月期のPLが、BSをどう変えたのかを見ていきます。
利益剰余金は▲1,895億円→+3,670億円、マイナスからプラスへ
キオクシアのBSサンキー図|上:2025年3月末、下:2026年3月末
2期のBSを並べると、まず大きく変わっているのが純資産です。2025年3月末の7,377億円から、2026年3月末には1兆3,991億円へ増加。わずか1年間で6,614億円増えました。
その中でも特に目立つのが利益剰余金です。2025年3月末は▲1,895億円とマイナスだったのに対し、1年後には+3,670億円へ反転。1年間で約5,500億円増えています。2026年3月期に稼いだ巨額の利益が、利益剰余金をマイナスからプラスへ押し上げたのです。
なお、利益剰余金がマイナスというのは、過去に積み上がった損失が、それまで蓄積してきた利益を上回っている状態です。これがプラスに転じたということは、過去のマイナスを埋め、さらに利益を社内に蓄積する水準まで回復したことを意味します。
自己資本比率は25.3%→37.9%、12.6ポイント上昇
利益の蓄積によって、お金の調達先を示すBSの右側のバランスも大きく変わりました。具体的には、純資産が約1.9倍に増加し、中長期的な財務安全性を評価する指標「自己資本比率(=純資産 ÷ 総資産)」は25.3%から37.9%へ12.6ポイント上昇しました。
(再掲)
興味深いのは、これが負債を減らした結果ではないということです。負債は2兆1,820億円から2兆2,910億円へ、むしろ1,090億円増えています。それ以上のペースで純資産が増えたため、自己資本比率が改善したのです。
ただ、自己資本比率37.9%という水準は、電気機器業に属する上場企業(約230社)における中央値61.7%には届いていません。キオクシアの財務状況は1年間で大きく改善したものの、同業他社と比べれば、財務の安全性はまだ高い水準とはいえません。
つまり今回のBSの変化からは、好調なPLを背景に自己資本比率が大きく改善した一方、業種中央値との開きはなお大きいことが分かります。今後も利益の蓄積が続くのか、自己資本比率がどう変化していくのかにも注目です。
決算書は「並べる」とわかる
決算書を数字の羅列として見ているだけでは、PLで生まれた利益が、その後BSをどう変えたのかまで追うのには手間がかかります。PL・BSサンキー図を並べることで、1年間の「稼ぎ」がBSにどんな影響を与えたのかを視覚的に捉えることができます。
・BS|利益の蓄積:+約5,500億円(利益剰余金▲1,895億円→+3,670億円)
・財務の安全性:+12.6ポイント(自己資本比率25.3%→37.9%)






