アポを断られても引き下がらない「現場主義」の精神

当時の電話はダイヤル式でしたが、ドキドキしながらダイヤルを回し、「富岡と言いますが、あの~小林先生にちょっとお会いしたいんですけど」と切り出すと、奥様だかお手伝いさんだかわかりませんが、女性の声で「小林はいま、長らく手のかかる仕事をしておりまして、ちょっとお会いできないんですよ」と断られてしまいました。
――『ビジネスエリートのための 教養としての文豪』より

勇気を振り絞って電話をかけたものの、結果はあえなく撃沈。しかし、ここで大切なのは「失敗した」という事実よりも、「自らリスクを取ってアプローチした」という経験そのものです。

ビジネスでも、新規開拓の営業や重要な提案が一度で通ることは稀ですが、恐れずに当たって砕ける経験が次の挑戦の糧になります。

空気を肌で感じることで教養は「血肉」になる

それでも私はあきらめきれず、電話帳に書いてあった住所を頼りに八幡宮の坂道をたどりました。小林邸の門前まで行って、「これがあの小林秀雄の家か」と思いを馳せ、そこで満足して家路についたことを覚えています。
――『ビジネスエリートのための 教養としての文豪』より

著者の行動は電話で終わりませんでした。本人は不在でも、実際に鎌倉の坂道を登り、その人物が息づく「現場」の空気を直接肌で感じに行ったのです。

ネットで検索すればどんな情報でも瞬時に手に入る現代。だからこそ、自分の足を使って現場に赴き、五感で感じる経験の価値は相対的に高まっています。

読書で得た知識を単なる情報で終わらせず、自ら動いて熱量を伴った「生きた教養」へと昇華させること。その泥臭い姿勢が、ビジネスという正解のない世界を生き抜く強力な武器になるはずです。