完璧を求めて妥協ができない。中途半端なものを出して「できない奴だ」と思われたくない。「先のばし」や「完璧主義」を脱するための方法を、『おい、とりあえず終わらせろ』を書いたエンジニアのnwiizo(ぬうぃぞう)氏が伝えます。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)
やる気を待つな
「やる気が出たらやろう」「モチベーションが上がったら始めよう」
ずっとそんな風に、「やる気スイッチ」を探していた。
でも、そんなもの存在しなかった。
「今日は集中できない」と呟いてNetflixを開き、2時間後にようやく戻ってきた自分に辟易したことは何度もあります。
「やる気」という言葉は、原因をブラックボックスにします。
本当は「タスクの価値が見えていない」のか「手順がわからない」のか「失敗が怖い」のかもしれないのに、「やる気が出ない」でまとめてしまう。そして翌日も同じことが起きる。
やる気は始める条件としては弱い
そこで、朝イチのスケジュールに「やる気なしでも着席」と書き、椅子に座ったらノートを開くだけ開く、と決めた。
毎朝の歯磨きに、いちいち「やる気」は要らないですよね。それでも人は動ける。それと同じで、行動の起点は気分ではなく動線でした。
以前、やる気がみなぎった朝に書いたコードと、眠くてだるい午後に書いたコードのレビュー結果を比べたことがあります。差はほとんどありませんでした。違ったのは着手までの時間だけ。
つまり、やる気はあった方が楽だけれど、始める条件にしてしまうと弱いのです。
体調という土台をまず整える
そして、精神力で身体を統制できると思っている人は多いですが、順番が逆です。
なぜなら、精神は肉体に依存しているから。依存先がダウンしたら、呼び出し元も落ちる。
脳は心臓や肝臓と同じ「臓器」です。体重の2%しかないのに、身体全体のエネルギーの20%を消費している。脳は身体の中で最も燃費が悪く、最も燃料切れに弱い。
それなのに私は、疲弊した肝臓に「もっと解毒しろ」とは言わないのに、疲弊した脳には「もっと頑張れ」と言っていました。
なぜ無視し続けたのか。
振り返ると、「体調管理は自己管理の問題だ」と思い込んでいたからです。睡眠を削って働くことを、意志の強さだと勘違いしていた。
4時間睡眠で3日目の朝、レビューで指摘された誤字が、前日の自分のコミットに3か所もあった。
寝不足の自分は「やる気がない自分」ではなく、「能力が一時的に落ちた自分」でした。
寝不足の日は、頭のブレーキが利かなくなる感覚がある。判断が雑になり、どうでもいい誘惑に負けやすくなる。十数時間起き続けた後の自分は、正直、酔っているときとあまり変わらない気がする。
これはやる気の問題ではなく、睡眠不足で注意や判断が鈍っている状態です。
腸内環境も無関係ではありません。意欲に関わるセロトニンの材料は多くが腸で作られるため、腸が荒れると脳の栄養が不足します。栄養が偏ればホルモンバランスが崩れて、気分の波が大きくなる。水分が足りないだけでも集中力は落ちます。
睡眠、食事、運動。この3つが崩れていたら、仕組みもトリガーも利きません。
別に完璧な食事は要らない。ただ、足りないものはプロテインやサプリメントで補い、余分なものは意識して減らせばいい。
完璧でなくていいので、まず栄養管理から始めてほしい。
体調を整えることは、終わらせる力の土台。ここが崩れていると、何をやっても空回りします。
本書の内容
まえがき 完璧を目指して、今日も終わらなかった
「もう少し良くしてから」の罠
「60点で出す」という革命
私たちには「終わらせる技術」が必要だ
第1章 おい、部屋を掃除しろ ―― 「完了」の正体を知る
「擬似完了感」のループに陥ってはいけない
「部屋の掃除」は終わらせるための小さな練習 ―― 小さな完了は複利のように効く
「わかってから出す」は動かない言い訳
あなたの「まだ60点」は、相手の「もう十分」かもしれない
「真面目な完璧主義」は「怠惰な先延ばし癖」と同じ
「良い」の基準を自分の中だけにとどめるな
先延ばしは「明日の自分への丸投げ」で進行する
「今日こそ頑張ろう」を繰り返さないための5ステップ
第2章 おい、やることを絞れ ―― ステップ1「決めろ」
何も聞かないまま2週間過ごすな
スコープを絞れ
「良い感じ」は測れないから終了条件を言語化する
ゴールは近い未来に置く
60点とは妥協ではなく「何を捨てるかを選ぶ」こと ―― 優秀なエンジニアも「諦めること」を決めて動く
早く聞く人が一番偉い ―― 「この方向で合ってますか?」を最初の30分で聞く
「山の間で立ちすくむロバ」になるな ―― 「十分良い」を選ぶ
小さな決定を頭の外に出す
第3章 おい、完了を祝え ―― ステップ2「分けろ」
やるべきなのに手が動かないのは、タスクがでかすぎるから ―― 「根性」より「構造」を疑え
「ただ手を動かせば終わる作業」に悩まないために ―― 「わからなさ」には5つの層がある
「全部わからない」は、書き出す前の幻想
完了を祝え
自分の「動ける粒度」を知る
動いたから見えた問題は前進の証拠
第4章 おい、手を動かせ ―― ステップ3「始めろ」
完璧な準備は、永遠に来ない ―― 方向だけ確認してから走れ
やる気を待つな ―― でも、体調は本当に大事だ
「本来の自分」という幻想を捨てる ―― 言語化も60点でいい
無駄かどうかの「判断そのもの」を消す環境設計
「美しい暮らし」の話にしないこと
「馬鹿げた小ささ」が効く ―― 「毎日30分」が失敗を作る
完璧主義者こそ、AIに叩き台を作らせろ
思わず始めてしまう「トリガー」を設定せよ
「失敗しても致命傷にならない構造」を先に作る
通知を切れ、視野を狭めろ ―― 「どうせ何をやっても変わらない」という冷笑は完璧主義の変形
第5章 おい、60点で出せ ―― ステップ4「出せ」
成果物と人間の価値は別物 ―― 「もし後輩がこれを出してきたら?」と想像する
シンプルなものをシンプルなまま出せ ―― 「早く終わってしまった気まずさ」を超える
早めのフィードバックは自分の死角に気づかせてくれる ―― アウトプットの質を落とす記憶の書き換えに抗う
「評価されたい」と「60点で出す」は両立する
助けが必要な状態を、ひとりで抱え込まない ―― 「60点で出す」のを許されるための関係性の作り方
「後戻りできないポイント」を外さない ―― 完了が先、改善は後
第6章 おい、いいからやり直せ ―― ステップ5「回せ」
「未来に向けたアドバイス」を受け取れ ―― 相手を評価者モードから助言者モードに変える問い
場当たり的な改善は「言葉の裏」を読むことで防げる
フィードバックの価値は受け手の準備で半分決まる ―― 解決法ではなく問題を言語化する
1回のフィードバックから10回使える原則を抜き出せ ―― 「自分は成長している」という感覚に騙されない
優れたチームは「誰が悪かったか」を問わない ―― 感情の処理と構造の理解を分ける
100回夢見るより60点で3回出せ
小さな成功が「地味な確信」を育てる ―― 「高揚感のある自信」より「地味な確信」
失敗など構わない ―― 仮説があれば
あとがき ―― あなたが終わらせたものを、誰かが待っている
私のおすすめの本を紹介します ―― とりあえず終わらせるために効く本たち