完璧を求めて妥協ができない。中途半端なものを出して「できない奴だ」と思われたくない。「先のばし」や「完璧主義」を脱するための方法を、『おい、とりあえず終わらせろ』を書いたエンジニアのnwiizo(ぬうぃぞう)氏が伝えます。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)
早く聞く人が一番偉い
以前、私のチームでこんなことがありました。
私が自分で「もう少し整えてから出そう」と抱えていたPR(プルリクエスト)が1本あった。
でも、その1本の上に、後輩のブランチ(メインの作業履歴から枝分かれさせた独立した作業)が積み上がっていた。
彼は私のコードを前提に実装を進めていて、私がマージ(データ、コード、プログラムを統合)するまで、自分の変更を確定できない。
私が抱えていた2日の間、彼のブランチは本流からどんどん離れていって、いざマージしようとしたらコンフリクト(システムが統合できないというエラー)の山になった。
私が「磨いていた」2日間、下流で待っている人の時間も止めていたのだ。
「この方向で合ってますか?」を最初の30分で聞く
そのためには、相手と合意して、終わりを決めなければならない。
でも、なぜか聞けないんですよね。どうしてか。
私の場合、正体ははっきりしていました。「そんなこともわからないの?」と思われる恐怖。
技術力で評価される世界にいると、「わからない」の一言がキャリアの否定に聞こえるのです。「そんな基本も知らないのか」「それくらい自分で調べろよ」。
その恐怖を味わいたくなくて、ひとりで抱えて、ズレたまま進んで、結局やり直しになる。聞かなかったことで失った時間は、聞く恥ずかしさとは比にならなかった。
聞く恐怖は一瞬、聞かない代償は永遠だ。
ちなみに、完璧主義の傾向が強く出ると、奇妙なねじれが生じます。それは、相談すべきことをひとりで抱え込み、自分で決められることを人に聞く、というもの。私も長いことそうでした。
言うまでもなく、方向性のような大きな判断は、粗い段階でも相談した方がいい。
それなのに、「完璧な案ができてから」と思って抱え込んでしまうんですね。一方で、自分の裁量で済む小さな判断を「これで合ってますか?」と確認したがる。
どちらも根っこは同じで、「間違った自分を見られたくない」ということです。
影響度が大きく不確実性が高いことは、相談する。影響度が小さく自分の裁量で決められることは、即決する。相談すべきことは粗い段階でも相談する。自分で決められることは秒で決める。それを徹底しよう。
現に、私のチームで一番信頼されていたエンジニアは、技術力が飛び抜けて高い人ではなく、「この方向で合ってますか?」を最初の30分で聞ける人でした。
聞かずに3日走って手戻りする人より、聞いて30分で方向を揃える人の方が、チームの時間を奪わない。
本書の内容
まえがき 完璧を目指して、今日も終わらなかった
「もう少し良くしてから」の罠
「60点で出す」という革命
私たちには「終わらせる技術」が必要だ
第1章 おい、部屋を掃除しろ ―― 「完了」の正体を知る
「擬似完了感」のループに陥ってはいけない
「部屋の掃除」は終わらせるための小さな練習 ―― 小さな完了は複利のように効く
「わかってから出す」は動かない言い訳
あなたの「まだ60点」は、相手の「もう十分」かもしれない
「真面目な完璧主義」は「怠惰な先延ばし癖」と同じ
「良い」の基準を自分の中だけにとどめるな
先延ばしは「明日の自分への丸投げ」で進行する
「今日こそ頑張ろう」を繰り返さないための5ステップ
第2章 おい、やることを絞れ ―― ステップ1「決めろ」
何も聞かないまま2週間過ごすな
スコープを絞れ
「良い感じ」は測れないから終了条件を言語化する
ゴールは近い未来に置く
60点とは妥協ではなく「何を捨てるかを選ぶ」こと ―― 優秀なエンジニアも「諦めること」を決めて動く
早く聞く人が一番偉い ―― 「この方向で合ってますか?」を最初の30分で聞く
「山の間で立ちすくむロバ」になるな ―― 「十分良い」を選ぶ
小さな決定を頭の外に出す
第3章 おい、完了を祝え ―― ステップ2「分けろ」
やるべきなのに手が動かないのは、タスクがでかすぎるから ―― 「根性」より「構造」を疑え
「ただ手を動かせば終わる作業」に悩まないために ―― 「わからなさ」には5つの層がある
「全部わからない」は、書き出す前の幻想
完了を祝え
自分の「動ける粒度」を知る
動いたから見えた問題は前進の証拠
第4章 おい、手を動かせ ―― ステップ3「始めろ」
完璧な準備は、永遠に来ない ―― 方向だけ確認してから走れ
やる気を待つな ―― でも、体調は本当に大事だ
「本来の自分」という幻想を捨てる ―― 言語化も60点でいい
無駄かどうかの「判断そのもの」を消す環境設計
「美しい暮らし」の話にしないこと
「馬鹿げた小ささ」が効く ―― 「毎日30分」が失敗を作る
完璧主義者こそ、AIに叩き台を作らせろ
思わず始めてしまう「トリガー」を設定せよ
「失敗しても致命傷にならない構造」を先に作る
通知を切れ、視野を狭めろ ―― 「どうせ何をやっても変わらない」という冷笑は完璧主義の変形
第5章 おい、60点で出せ ―― ステップ4「出せ」
成果物と人間の価値は別物 ―― 「もし後輩がこれを出してきたら?」と想像する
シンプルなものをシンプルなまま出せ ―― 「早く終わってしまった気まずさ」を超える
早めのフィードバックは自分の死角に気づかせてくれる ―― アウトプットの質を落とす記憶の書き換えに抗う
「評価されたい」と「60点で出す」は両立する
助けが必要な状態を、ひとりで抱え込まない ―― 「60点で出す」のを許されるための関係性の作り方
「後戻りできないポイント」を外さない ―― 完了が先、改善は後
第6章 おい、いいからやり直せ ―― ステップ5「回せ」
「未来に向けたアドバイス」を受け取れ ―― 相手を評価者モードから助言者モードに変える問い
場当たり的な改善は「言葉の裏」を読むことで防げる
フィードバックの価値は受け手の準備で半分決まる ―― 解決法ではなく問題を言語化する
1回のフィードバックから10回使える原則を抜き出せ ―― 「自分は成長している」という感覚に騙されない
優れたチームは「誰が悪かったか」を問わない ―― 感情の処理と構造の理解を分ける
100回夢見るより60点で3回出せ
小さな成功が「地味な確信」を育てる ―― 「高揚感のある自信」より「地味な確信」
失敗など構わない ―― 仮説があれば
あとがき ―― あなたが終わらせたものを、誰かが待っている
私のおすすめの本を紹介します ―― とりあえず終わらせるために効く本たち