ノーベル賞の登竜門・ラスカー賞受賞で話題! 睡眠学の世界的権威・柳沢正史教授が、最新研究をもとにやさしく解説した著書『世界最高の睡眠学が教える 睡眠の正解』が話題です。巷にあふれる睡眠の常識・思い込みの真偽を解き明かしつつ、「眠れない」「起きられない」「寝ても疲れがとれない」といった悩みの解消法を提唱します。あなたが本来の自分を取り戻し、よりよい明日を迎える睡眠のヒントをお届けします。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局・中村直子)

自称ショートスリーパーの99.9%はただの寝不足! 睡眠学者・柳沢正史の心の声「いや、たぶん違いますよ」Photo: Adobe Stock

自称ショートスリーパーの99.9%は無自覚な寝不足

「自分はショートスリーパーなので、睡眠時間は4~5時間で大丈夫です」

 そうおっしゃる方に、これまで何人もお会いしてきました。そのたびに、私は心のなかでこう思っています。「いや、たぶん違いますよ」と。ここではっきり申し上げましょう。自称ショートスリーパーの99.9%は、無自覚な寝不足です。

 睡眠研究の立場からいえば、これくらい言いきっても言いすぎではありません。

真のショートスリーパーは、数千~数万人に1人

 本当に睡眠時間が短くても問題のない“真のショートスリーパー”はたしかに存在します。
 成人の平均的な睡眠時間が7~8時間といわれるなかで、4~5時間しか寝なくても、昼間に眠くならない。疲労感もなく、集中力が落ちることもない。しかも、休日に長く眠って不足分の帳尻を合わせることもない。それほど短時間の睡眠でもつねに高いパフォーマンスを維持し、精神的にもタフで、健康状態も良好。それこそが正真正銘、真のショートスリーパーです。

 真のショートスリーパーの存在は、科学的な研究データからもはっきりと裏付けられています。簡単にいうと、彼らは生まれつき短い睡眠時間でも十分に回復できる“特別な遺伝子”を持っているのです。

くわしくは…
“ショートスリーパー遺伝子”の研究の第一人者として、この分野の研究を牽引してきたのが、私の友人でもある、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の神経学者、インフイ・フー博士のグループです。
 2009年に最初の短時間睡眠関連遺伝子としてDEC2の変異を報告して以来、その後もADRB1やNPSR1など、自然な短時間睡眠に関わる複数の遺伝子変異が見つかっています。

 しかし肝心なのは、そのような特別な遺伝子を持つ人の割合です。こうした特定の遺伝子変異は、非常にまれであることがわかっています。
 必要な睡眠時間は年齢によっても変わりますが、遺伝子変異の有無にかかわらず、「必要な睡眠時間が5~6時間で十分」という若者まで条件を広げても、おそらく数百人に1人いるかどうかでしょう。ましてや「3~4時間で平気」となれば、その確率ははるかに低くなります。