いま、アメリカ西海岸にあるテック企業の創業者や従業員がこぞって使う思考法があります。『その仕事、スケールするの?』は、シアトルの巨大IT企業で働く著者・福原たまねぎ氏が、世界一流の同僚から学んだ成果の出る仕事のやり方を明かす1冊です。今回は、発売に先駆けて、本文の一部を公開します。

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世界トップの企業が大切にしている「スケール思考」

「スケールするか?」という考え方は、今や世界を変えるテクノロジー業界で一番重要とされている。

会社においても個人の仕事においても、中核をなす。

UberやX(旧Twitter)といった世界的な企業に超初期から投資し、シリコンバレーで「もっとも成功したエンジェル投資家」と呼ばれるナヴァル・ラヴィカント。

先見の明がある彼は、2018年にXでこんな発言をしている。

“You will get rich by giving society what it wants but does not yet know how to get. At scale.” (「お金持ちになるには、社会が求めているけれど、まだ手に入れる方法がわからないものを提要しなさい。それも、スケールした規模で」)

世の中が欲しがっているものをつくるだけじゃ足りない。

それを「スケール(何倍にも広がる形)」にして届けなさい、と言っているのだ。

ChatGPTを生んだOpenAIの創業者、サム・アルトマンも、成功について語るエッセイのなかで「時間は線形にしかスケールしない」と書いている。

「どれだけ優秀な人でも、1日は24時間しかない。だからこそ、時間を切り売りするのではなく、人々が欲しがるものをスケールする形でつくる必要がある」ということだ。

また、SpaceXやNeuralinkなどのグローバル企業を牽引するイーロン・マスクは、電気自動車メーカー・Teslaの計画で、「持続可能な未来のために重要なのは、生産量をできるだけ早くスケールさせることだ」と述べている。

そして、そのためにTeslaは「車をつくる」だけでなく、「車をつくる機械」、つまり工場そのものをプロダクトとして設計している。

つまり、世界を変えるトップの人たちはみんな、「どうやって仕事をスケールさせるか」に異常なまでの執着を持っているのだ。

さらに、「スケール」はIT業界の用語として浸透している。

今やだれもが知る「ChatGPT」などの生成AIを支えているのが「スケール則」というルールだ。

AIに勉強させるデータの量やコンピューターのパワーを増やすほど、その性能が圧倒的なスピードで跳ね上がっていくという法則だ。

「もっと大きく、もっとたくさん」が、そのままAIの賢さに直結する。

AIで頭角をなしているMetaは、「Scale AI」という飛ぶ鳥を落とす勢いだったスタートアップに巨額を出資して創業者を迎え入れ、AI時代に成長を加速させている。

また、Google・Microsoft・Amazonといった巨大IT企業は、「GAFAM」のかわりに「ハイパー・スケーラー」と呼ばれる。

世界中にデータセンターを張り巡らせ、需要が増えれば増えるほど、システムを一気に拡張していける企業のことだ。

彼らはビジネスが巨大になったからすごいのではない。

「再現可能で、広がりがあり、自動で動く仕組み」を高速で展開していく、その仕事観こそがすごいのだ。

まさに「スケールを制するものが、ビジネスを制する」時代になっているのだ。