東京都の中学3年生約7万人が受ける「中学校英語スピーキングテスト(ESAT-J YEAR 3)」が、2026年11月22日(日)に実施されます(追・再試験日は12月13日)。結果は都立高校入試の総合成績に加算されるため、残り1か月の過ごし方が合否に直結します。麗澤大学外国語学部教授で、『中学英語だけで面白いほど話せる! 見たまま秒で言う英会話』などの著書がある森秀夫さんが、2019年度のプレテストから昨年度までに公表された過去問をもとに、出題傾向を分析しました。今回は「何が、どんな場面で出ているのか」です。

Photo: Adobe Stock
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どんなテスト? 4つのパートと「加点方式」の採点

ESAT-Jは、面接官と話すテストではありません。タブレットに向かって一人で録音する形式で、問題は4つのパートからなります。

〈Part A〉音読(2問):
画面の英文を30秒で準備し、30秒で読む

〈Part B〉会話(5問):
質問に答える4問(準備なし・各15秒以内)と、自分から質問する1問(準備10秒・15秒以内)

〈Part C〉ナレーション(1問):
画面に指定された書き出しを使い、4コマの出来事を40秒以内で語る(準備30秒)

〈Part D〉意見スピーチ(1問):
先生の英語の説明を聞き、テーマと3つのヒントから意見と理由を40秒で話す(準備60秒)

採点は「コミュニケーションが達成できているか」「言語使用は適切であったか」「相手に伝わる音声で話せているか」の3観点です。都教委は「採点基準に従って『できていること』を評価しています」と明記しています。減点方式ではなく加点方式。難しい単語や完璧な文法より、「質問に合った内容を、聞き取れる声で、時間内に言えたか」が点になります。

昨年度(2025年11月23日実施、受験者70,489人)の平均スコアは74.9点。A評価(80点以上)が47.2%で、前年の31.3%から大きく増えました。前年度に比べ、平均スコアが上がり、A評価の割合も増えています。

〈Part A〉音読文には、問いかけで始まる紹介・案内文や、人物紹介、物語がある

過去の音読文を並べると、書き出しがほぼ同じ型であることに気づきます。

・Do you go to the library? Our library has many kinds of books. …(図書室の紹介動画)

・Have you heard about the new math club? It will start next week. …(校内放送)

・Do you drink tea? You may have seen that there's a new tea shop next to our school. …(スピーチ)

・Do you have a dream? I really want to go to New Zealand. …(自己紹介)

聞き手への問いかけで始まり、情報を2~3文で伝え、最後に“Please tell us about your favorite books.” “If you want to join, please talk to Mr. Harris.”と勧誘や依頼で結ぶ。これは、紹介・案内をする音読文に見られる構造の一つです。

もう一つの型が「留学生の紹介」です。

・This is Kate. She came to Japan to visit our school. She loves running. …

・Today, I will tell you about Helen. She is from London, and she will study at our school for one month. …

名前、出身、好きなこと、予定、そして“Why don't you ask her about life in the U.K.?”という呼びかけ。昨年度もオーストラリア出身のエミリーを紹介する文でした。

音読で評価されるのは「意味や内容が伝わるように読めているか」です。疑問文の文末、人名・地名、If節の区切りが聞き手に伝わるかが問われます。

〈Part B〉留学先や留学生とのやり取りが中心。質問は3種類しかない

Part Bの場面設定は、プレテスト以来一貫して「留学中」「ホームステイ中」「留学生と一緒」のいずれかです。昨年度は「ニュージーランドに留学中。友達のノラと科学博物館の体験イベントのパンフレットを見ながら話している」でした。

そこで出る質問は、3種類に分けられます。

第一は「画面の情報を読み取って答える」質問です。

・Which floor is the restaurant on?(ホテルのフロアガイド)

・Which event will start the earliest?(スポーツの開始時刻表)

・What is the fastest way to get to the concert hall?(経路図)

・What are all of the events in September?(イベントポスター)。

答えは1文で足ります。

第二は「自分の考えや、自分自身について答える」質問です。

・What do you usually do on Sundays?

・When did you start learning English?

・What sports do you like to watch?

・What is the first thing you do every morning?

昨年度は、体験イベントの選択とその理由を答える問題が2問、自分の好みや生活について答える問題が2問出ました。準備時間はありません。

第三は「自分から質問する」問題です。画面に日本語で「今までに訪れた国の数」「日本で行きたい場所」と示され、それを英語で相手に尋ねます。

解答例は次の通りです。

・How many countries have you visited?

・Which place would you like to visit in Japan?

2022・2023年度には「校外活動の案内を見て、書かれていないことを先生に尋ねる」という、より難しい形も出ています。

この第三の型に備え、自分から質問する練習も必要です。答える練習はしていても、質問する練習をしていない生徒が多いからです。

〈Part C〉4コマはすべて「中学生の昨日・先週」

ナレーションの4コマは、過去すべて身近な出来事です。

・犬の散歩中に雨が降り、濡れた犬を家で洗う(2019年度プレテスト)

・電車に入ってきた鳥が、座席に置かれた帽子にとまり、花を置いて飛び去る(2022年度)

・学校の行事で走っている途中に帽子を落とし、後ろの生徒に拾って返してもらい、二人で一緒にゴールする(2023年度)

・バス停で観光客が地図を見ていて、道を聞かれ、バスを教える(2024年度)

・音楽室で友達がピアノを弾いていて、歌い始めると皆が集まり、合唱になる(2025年度)

2024・2025年度の本試験では、“Last week …”という書き出しが指定され、解答例は4文前後です。

・Last week, I went to the bus station. Two tourists were looking at their phones. Then, they asked me the way to the mountains. So, I showed them their bus.

背景は過去進行形、出来事は過去形、コマの切り替えはThen / So / After that。この3点がそろえば40秒は十分に埋まります。

〈Part D〉テーマは2年連続“our town”

意見スピーチのテーマは、年度によって形式が変わってきました。

2019~2020年度(プレテスト):
・What is your favorite thing to do in the evenings?

・What's the most popular event at your school?

2022~2023年度:
海外姉妹校の生徒からのビデオレターに答える形式。「同じ給食を食べるのと好きな昼食を選ぶのと、どちらがよいか」「遠足は山と美術館のどちらがよいか」

2024~2025年度:
先生の英語の説明を聞き、テーマについて、3つのヒントの一つ、または自分自身の考えを基に話す形式。

・What is a good way to make our town better?(concert halls / parks / restaurants)

・What is a good way to learn more about our town?(the history museum / the library / local people)

共通しているのは「意見→理由→具体例」が求められること、そして「日本のことを知らない人にも伝わるように」「日本の地名や人名を使う場合はそれを知らない人に分かるように説明する」という指示が毎回付くことです。解答例はこうです。

I think we should build more parks because we need places to relax. For example, we can enjoy sports there. Building parks is a good way to make our town better.

意見、理由、例、そして最初の意見の言い換え。この解答例は3文です。意見と理由、具体例、まとめを40秒以内で伝えます。

全問題に共通する「3つの場面」

4つのパートを通して見えてくるのは、場面がきわめて限られていることです。

第一に「留学・ホームステイ」。Part Bの設定はすべてこれで、Part Aにも、留学先での発表や、留学生を紹介する場面が見られます。

第二に「学校と地域」。クラブ、図書室、ボランティア、歓迎パーティー、そして“our town”。

第三に「身近な出来事」。犬、電車、学校の行事での競走、バス停、音楽室。

つまりESAT-Jが測っているのは、「外国の人に、自分の学校と町と日常を英語で説明する力」です。難しい社会問題を論じる力ではありません。これが分かれば、対策は驚くほど絞れます。

次回は、この分析をもとに「今年はどんな問題が出そうか」の予想問題と、残り1か月でやるべき練習法を具体的に示します。

出典:東京都教育委員会公表のESAT-J問題・解答例(令和元年度プレテスト、令和2年度確認プレテスト、令和4~7年度本試、YEAR 2 令和5~7年度、YEAR 3 令和6~7年度)、同「令和7年度中学校英語スピーキングテスト(ESAT-J YEAR 3)の実施状況について」(2026年2月)。

森 秀夫(もり・ひでお)
麗澤大学外国語学部教授
上智大学大学院修士課程修了。英語教育・英語教員養成が専門。20年以上、旺文社の『全国大学入試問題正解 英語』の解答者として、大学入試問題を分析している。その中で、なぜ多くの日本人が難解な大学入試の英文を理解できるにもかかわらず、いつまでも話せるようにならないのかと疑問に思い、中学校や高校で学習する英文法と英単語の知識をいかに定着させるか、またそれらを実際の運用にどのようにつなげていくかに関心を持って研究を行っている。主な著書に『4コマ漫画で英語1分間スピーキング』(Gakken)、『AREA式で英語2分間スピーキング』(Gakken)、『見たまま秒で言う英会話』(ダイヤモンド社)『パターンで攻略 英語スピーキング入門』(DHC・共著)など。