中国・香格里拉(シャングリラ)にある公園で偽のチベット衣装を着てポーズを取る漢族の観光客。そこには写真撮影のために模造のチベット祈祷旗が飾られている
【シャングリラ(中国)】読経、深紅の衣をまとった僧侶、風にはためく5色の祈願旗「タルチョ」などを通してチベットを体験したいと思っても、中国の一般国民はチベットには行かない。
代わりに向かうのは、隣接する雲南省にある観光ブームの街シャングリラ(香格里拉)だ。ここではチベット文化から宗教的要素の多くが取り除かれ、中国で多数派の漢族向けに「無害化」されている。チベット仏教最高指導者ダライ・ラマの影響の痕跡も一切ない。
旧市街の狭い路地は、偽物のチベット衣装を着た漢族の観光客であふれかえっている。彼らはソーシャルメディア向けに映える写真の背景として古い僧院を利用している。
丘の上の寺院に群がり、かつて世界最大だった高さ21メートルの巨大な金色のマニ車(円筒形の仏具)を回す。地元当局が5年前に「非宗教施設」に指定して建てた、高さ107メートルの仏塔に向かう観光客もいる。
北京の共産党当局者は、西側諸国でも自国の漢族の間でも、チベット文化がロマンチックな魅力を持つことをよく理解している。中国政府が分離主義者として非難するダライ・ラマ14世が90歳を超えた今、チベット仏教の支配権をめぐる戦いが迫っている。
ダライ・ラマ14世は1959年にインドへ亡命して以来、中国に対する世界的なチベット抵抗運動の中心となってきた。中国はチベット独自のアイデンティティーを「圧倒」しようとしていると彼は警告する。
人心を巡るこの戦いは、シャングリラのような場所で繰り広げられている。ここでは高度に商品化されたチベット文化が、政治的に受け入れ可能な形で、一般の中国人向けに提示されている。
それは効果を上げている。
地元のチベット族でさえ、この動きに加わる以外にほとんど選択肢がないと感じている。観光業と マツタケ採り を除けば、地形が険しく歴史的に貧しいこの地域には、ほかに富の源泉がほとんどない。







