「謙虚さこそが、最強の戦略だ」と主張するのは、モルガンスタンレー、Googleなどで働き4大陸50カ国以上のリーダーを見て続けてきたピョートル氏。
しかし、謙虚に振る舞っていると、「相手から舐められるのではないか」と心配になるかもしれません。他人に利用されない謙虚さについて、新刊『「謙虚さ」という戦略』から一部抜粋・編集してご紹介します。

一流の謙虚な人がやっている「戦略的3つの聞き方」Photo: Adobe Stock

優秀な人はどのようにコミュニケーションをとるのか

 謙虚で腰が低い人と接していて気づく、明らかな特徴があります。

 それは彼らが極めてよく「聞く」ということです。
 これは単純に相手の話に耳を傾けるというレベルのことではなく、極めて戦略的な行動です。

 謙虚さを示す最初の行動は、話すことではなく、聞くことです。話すことで、自分の知識や考えを相手に伝えられます。一方、聞くことで、自分にはない情報だけでなく、相手がどのように考え、何を大切にしているのかを知ることができます。

 Aさんが話すとき、Aさんは自分が知っていることを、自分の方法で表現することしかできません。
 しかし、Aさんの話を聞いているBさんは、Aさんが何を知っているか、どのように考えているか、どのような価値観を持っているか、という非常に豊かな情報を受け取ることができます。

「本当の聞く」ができているか?

 ところが、多くの人は「聞いているふり」はできても、「本当に聞く」ことができていません。
 なぜなら、無意識が「次は何を言うべきか」「何を言って自分を賢く見せるか」で忙しいからです。つまり、頭の中で“独白”が始まっているのです。これは僕が「防衛的リスニング」と呼んでいるものです。
 本物の傾聴は、この頭の中の独白が静まったときにだけ可能になります。

 では、明日の会議で具体的に何をするのか。
「相手の話をよく聞きましょう」だけでは、やりようがありません。
 聞くというのは態度ではなく、動作だからです。そこで、戦略的謙虚さにおける具体的な「聞き方」を3つ紹介します。

[1]最初に浮かんだ一言を言わない

 相手が話している途中で、返す言葉を考え始めてしまうことがあります。
 その返答に気を取られると、話の続きを十分に受け取れなくなります。
 最初に浮かんだ言葉をすぐ口にせず、いったん間を置く。最後まで聞いた内容を踏まえて、応答を選び直してみてください。

[2]相手の言葉を、そのまま返す

 相手の話を聞き終えたあと、相手の話を要約して確認するのは、有効な型です。ただ、いきなり自分の言葉に置き換えると、相手は「勝手に解釈された」と感じることがあります。
「つまり、リソース配分の問題ですね」と要約された瞬間、相手は次から短く話すようになります。

 そこで、要約する前に、「ひとつ言葉を足す」ことを意識してみてください。
「相手が使った言葉を、そのまま返す」のです。
 そのうえで要約したり、相手の話を深掘りしたりするのです。

「回らない、とおっしゃいましたよね。その回らないというのは、どのあたりですか」

 この一手間で、あなたの言葉が「理解の証明」ではなく「理解の確認」になります。

[3]聞き終わっても、すぐ解決しない

 人は、「聞く」と問題を解決したくなります。有能な人ほど、そうです。
 ただ、相手がまだ十分に話せていない段階で解決策を示すと、「十分に聞いてもらえなかった」と感じさせることがあります。そこで、解決策を提案する前に確認します。

「これは、聞いてほしい話ですか。それとも、一緒に考えたい話ですか」

 この一言を挟めるかどうかで、その後に相手の話す量が変わります。
 この3つは、生まれつきの才能に頼らず、日々の対話で練習できる行動です

 最初の一言を我慢する。
 言い換えを我慢する。
 解決を我慢する。

「聞く力」とは、聞き取る能力のことではなく、「自分の先入観や判断をいったん脇に置き、共感的理解と肯定的関心を持つ姿勢」のことなのです。

ピョートル・フェリクス・グジバチ

連続起業家、投資家、経営コンサルタント、プロノイア・グループ株式会社 代表取締役、株式会社GA technologies 社外取締役

ポーランド生まれ。2000年に来日。モルガン・スタンレーを経て、Googleでアジア太平洋地域の人材開発と組織改革に携わる。2015年にプロノイア・グループを設立し、組織開発と経営者コーチングを行う。講演者としても、国内外の経営層やカンファレンスで基調講演を行っている。2016年に共同創業したモティファイでは人材育成プラットフォーム「Motify」を400社超に導入し、2019年に同事業を譲渡。組織の内側、経営者、取締役会という3つの立場から、日本の組織を見てきた。著書は『世界最高のチーム』『世界最高のコーチ』(ともに朝日新聞出版)、『心理的安全性 最強の教科書』(東洋経済新報社)、『NEW ELITE』(大和書房)など多数。本書が20冊目となる。エンジェル投資家としても活動するほか、東京・永田町のポーランド料理レストラン「Ani Mru Mru」のオーナーを務める。