ベンチャーやスタートアップと聞いて、何を思い浮かべますか? 熱狂的な立ち上げ時のエピソード? それとも、売却や上場などの華々しい幕引きの瞬間? 実は、そうした「よくある成功エピソード」は起業を成功に導くうえで役に立たない――そう言い切るのが、起業、投資、新規事業創出のいずれにおいても成果を出し続けているスコット・ベルスキ氏です。起業におけるブラックボックスを明るみに出し、「最後に正しい側にいられるかどうか」を決めるうえで必要なあらゆるアドバイスを網羅した『ザ・ミドル 起業の「途上」論』(関美和訳、英治出版)から、珠玉の3編を紹介します(本稿は、同書の一部を抜粋・編集したものです。全3回の3回目)。
小物のままでいろ!?
フェイスブックの意外な哲学
フェイスブックの本社を歩き回ると、「小物のままでいろ」という哲学で知られる会社らしく、ラップトップのステッカーやポスターのアチコチに「この旅はまだ1パーセントしか終わっていない」という言葉を見かける。
進歩するのはいいことだが、進歩のせいで大胆な手を打つ気満々の初期の時代が終わってしまうのが問題だ。ほとんどの会社は、どちらかというとマイスペースの二の舞になる。成功したプロダクトのやり方を繰り返し、それを維持することだけに集中する。フェイスブックはそれとは逆に、まだ試合がはじまったばかりのように振る舞う。
「まだはじまったばかり」の気持ちを持ち続ければ、人々は思い込みを疑い、視野が広くなる。2004年に創業されたフェイスブックがこれほど長く成長を続けていられるのは、これまでに何度もガラリと姿を変えてきたからだ。大学の学生名簿としてはじまったフェイスブックは、ほかのウェブサイトやサービスにログインできるプラットフォームになり、それからイベント発見ツール兼グループが集う媒体となった。インスタグラム、メッセージプラットフォームのウィチャット、仮想現実企業のオキュラスも傘下に入れた。フェイスブックは進化を続けていて、もしその成長が限界を迎えるとしたら、チームメンバーが終わりに近づいたと感じ、そのように振る舞うようになった場合だけだろう。