安定的な黒字体質を確立したとはいえ、他行の例に漏れず、本業の収益が伸び悩むりそなホールディングス。リテールバンクとしての今後の成長戦略とは。
2013年10月1日、りそな銀行の下期最初の全国部長会議で、東和浩・りそなホールディングス社長がひときわ強調した言葉がある。インターネットと実店舗の融合を図る「オムニチャネルの実現」だ。
東社長はなぜこんなことを声高に唱えるのか。背景にはりそなが選んだビジネスモデルがある。
03年に公的資金が注入されて以来、りそなはもともと強みとしていた個人と中小企業のリテール取引に特化し、メガバンクにはないサービスを展開することで今後の活路を見いだそうとしてきた。
ただし、リテールは1案件当たりの貸出額が少ない割にきめ細かい対応が求められる。それでも確実に利益を出すべく、支店の事務作業量を大幅に削減。同時に営業人員を増加したり、店舗の営業時間を夕方5時までに延長したりし、リテールの中でも特に住宅ローンを中心とした個人向けの貸し出しを増やしてきた(図(1))。
また、顧客の信頼を失わないよう、株価変動という外部環境の変化に業績が左右されない体制づくりも徹底した。この10年間で政策保有株式を1兆円以上減らし、13年3月期には03年3月期の4分の1以下の規模まで圧縮している。
結果、リーマンショックでメガが軒並み大幅赤字に陥った09年3月期ですら、りそなは最終黒字を確保。安定的な黒字体質を物にしている(図(2))。
効率面もまずまずだ。りそなと比べてはるかに大量の国債を保有していた3メガは、その売買で巨額の利益を稼ぎ出していた。にもかかわらず、経営の効率性を示すROA(総資産利益率=当期純利益÷総資産)の過去5年平均はりそなのほうが高い(図(2))。これもひとえに、小口案件で地道に利益を積み上げてきたおかげである。
しかし、だからといって将来的にも経営が盤石なのかといえば、そうは言えない。