

このように、4年ぶりに当時の提案内容を振り返ってみると、2020年代にようやく実現されると考えられていた最先端のユーザ・エクスペリエンスは、要素技術としてはすでに実現段階に入ったものも多いことに、改めて気がつく。
招致活動に関わった人間としては、仮に招致が実現していたら、それをドライバーにした研究開発が進み、2020年にギリギリ間に合うというイメージでいた。しかし実際には、一部の技術はそうした予想以上に早く進行している。
また、新しいトレンドもさらに合流してきた。たとえば今年のモバイル・ワールド・コングレス(MWC)でも、ERP大手のSAPが、サッカーを題材としたIoT(Internet Of Things:モノのインターネット)の活用を視野に入れた、ビッグデータのデモンストレーションを行っていた(記事参照)。モバイルブロードバンドとクラウドコンピューティングの普及がもたらした賜物といえるだろう。
こうした技術のパラダイムシフトは、スポーツやエンターテインメント分野はもちろん、それ以外の様々な分野にも大きな影響を与えている。実際、SAPのデモンストレーションは、単にスポーツビジネスを対象としたものではなく、その先にある産業全般や社会インフラを強く意識したものである。
スマートフォンやスマートデバイスの急激な普及と高度化、モバイルブロードバンドとクラウドコンピューティングの進展、パーソナライゼーションの台頭、データの蓄積の拡大、映像技術の総合的な向上――改めて見てみると、この4-5年の間に、技術は急激に進化している。そしてそれらの要素が相乗効果を伴って、私たちの生活空間を大きく変化させている。
2020年東京にオリンピックを迎える、私たち日本の産業界やユーザーは、こうした技術トレンドを貪欲に取り込んで、世界にアピールしていくことが期待されているのではないだろうか。そのために私たちはどんなアイディアをひねり出せるのか、そんなことを考えながら、ワールドカップで夜更かしを重ねるのも、案外悪くないものだと思う。